椎名作品二次創作小説投稿広場


復活

電撃クイーン!5


投稿者名:ETG
投稿日時:05/ 7/18

霧の中を横島達の方へ進んできたマザーリジアが人型をとる。

「横島にルシオラって言ってたね。騙し討ちにして悪かったよ。流石に強いね。
 お互いあっさり決着付けたいだろう。騙したお詫びに一騎打ちでどうだい?」

「お、俺ッスか?」
横島がおどおどと逃げ腰で返事する。

「相変わらず気が抜ける演技だね。もう気が付いてるとようだけど、私を倒せば総て終わるよ。
 私もこれ以上子供達が傷つくのを見るのはイヤだ。そっちもアンタが死ねば私達を退治する戦闘力は無くなるだろう?」

マザーリジアが仁王立ちで呼びかける。

「そこで、お互い自身と眷属のみで勝負するってのはどうだい? 
 こっちの戦闘力は結構弱るけどそっちはどのみちアンタだけが主戦闘力だろう?」

戻ってきた令子が即座に反応する。
「横島クン、絶好のチャンスよ!! 受けて立ちなさい!!」

「チョ、ちょっと待ってください!! 3m級数匹でも手こずるのに親玉+眷属ですよ!! 1人じゃどうしようもないッス〜!
 本来なら美神さんが一騎打ちする場面じゃないッスか〜!!」
てっきり断って戦闘場所変えるか、さっき人質に取った子供達ダシに有利に運ぶかと思ってた横島。

「ほっほ〜ぅ? アンタ、私と一騎打ちするよりフナムシと一騎打ちする方が怖いってのね! 私も舐められたモンね」
令子はその顔を見て意地の悪い表情で反応を楽しむ。

「んなことは言ってないッス〜〜!!」

「じゃ、GS試験で自分から突っかかってきたんだし平気よね!! それに始めは1人で片付ける気で来たんでしょ?!」
「こんなめちゃくちゃな相手だとは思ってなかったんスよ〜!」
「プロのスイーパーは自分の見積もりに責任とらなきゃね〜〜」

おもっきり泣き言を言う横島と楽しむ令子。
ひとしきり横島をからかった後、横でまーまーとか言っていたおキヌに命じる。

「おキヌちゃん! 残ってる霊力全部コイツにやって!」

「え、見たり攪乱したりしなくてもいいんですか?」
こっちも意外な命令に戸惑う。

こいつらもこういう駆け引きはまだまだねと解説モードに移行する。

「手出しはしないってことになってるし、あっちにはだいぶ戦力が残ってるわ。戦力分散を狙ってる、かもなのよ!
 大軍持ってるあっちの方が戦力分散すると有利になんの。
 厄珍の倉庫にかなりヤバイ破魔札やら吸印札なんかも混ざってたんでしょ。
 残り戦力で事実上戦闘力のないおキヌちゃんや私を襲われるとどうしようもないわ。
 だから霊力全部横島クンに渡したらここ離れるわよ!」


マザーリジアに答えを言うまでの自然休戦期間にとりあえず令子が近くの高圧線と数往復して横島に霊力を補充する。

(ホントにコイツ霊力バカ食いすんだから。ま、ルシオラは元魔族だし、しゃーないんだろうけど・・・・)
シロタマやおキヌなら3人合わせても令子が目一杯詰め込んだら一回で充分元に戻る。

(それはそれとして、そろそろお楽しみタイムよね!!)

「ルシオラ、なんかあったら電話して。霊力は充分‘補充してあげたし’、
 今度はマスター危険にさらすようなドジしないと思うけど♪」

ホーホッホッ!! 反論できないでしょ反論できないでしょ。

く、屈辱だわ!! 美神さんに言い返せないなんて〜!!
「ま、まかしといて。美神さんもなんかやるつもりなんでしょう?」

横島クン任したわよ。アレは私の丁稚なんだからね!

「まあ、それはお楽しみね。おキヌちゃん行くわよ!!」

令子とおキヌが消えると横島とルシオラが残される。



「振り出しに戻る、かな?」
横島が誰に言うともなくつぶやく。

「美神さんのおかげで相手は減って、人質も確実。手の内もだいぶわかった。こっちは霊力充分だから相当前に進んでるわ。
 それにたぶん、美神さんはなんか仕掛けるつもりで離れたのよ。相手を撃破する必要は多分無いわ」

霊力の増えたルシオラが自らの姿を消しながら答える。

「ま、美神さんのことだそんなトコだろ」

ふうっと横島がため息をついて立ち上がる。

「ル、ルシオラ!! なんやと思う!! 美神さんのことや!! 俺を巻き添えにするトンでもないこと考えてるに違いない!!」
「知らないわよ!!」
「ナパーム打ち込まれたり、倉庫群ごと封印されたりせんやろか〜!!」
「じゃ、今から逃げる? 私はいいわよ」

ルシオラの台詞でおちゃらけを止めた横島がハンドオブグローリーを展開させる。
「そういうわけにもいかんやろ〜」

霧の中で立ち上がった横島を見たマザーリジアが人型から5mの巨体に戻る。
「覚悟は決まったようだね。やるかい」

(ちっ! 油断した‘目’の巫女やら霊力補充器のパジャマ女各個撃破する当てがはずれたね。
 ま、居なくなっただけでも良しとするかい)


「ご指名だ。全力で行かせて貰おう」

それを聞くやいなやマザーリジアがフナムシの素早さで間合いを詰め、上と横から触角をふるう。

ザン! ザシュッ! ドゥン!

令子に霊力upされたグローリーの一閃で触角が2本とも宙に舞う。
間髪入れずルシオラの霊波砲が側面からリジアを貫く。

「やったか!」

着地した足下に回り込んでいた数十匹のフナムシが飛びかかって火を噴く。

「やべっ」
グローリーを蠅叩きのようにして潰すと共に、吸印札で纏めて封じる。

『ヨコシマ、数十匹ぐらいの発火なら‘火気厳禁’のお札で封じれると思うわ』
『あ、そうか。ところで親玉は?』
『見ての通りね。全くこたえてないわ』

フナムシとしての寿命はとっくに尽き、生きた体を持たぬリジアは血すら流していない。
それどころか切り落とした触角は何時のまにやら本体に戻っている。 

『素早くて知能の高いゾンビってとこね。厄介よ』
『本来おキヌちゃんの範疇か!』
『微妙ね。憑いてる兵鬼が相当なことやってるわ。デミアンと見た方がいいかもね』

ルシオラが刷り込み知識の中で、横島の知っている魔族の名前を挙げる。

「本気のアンタはすごいね。この装甲や触角を一撃で切り飛ばされるとはね」
触角をつけなおしたリジアが向き直る。
「やっぱり交渉が正解だったかねぇ。今更だから、子供達のためにも死んでもらうよ!!」

言うなり複眼の間から霊波砲がうなる。

「飛び道具もありかい!!」
とっさにサイキックソーサーを展開して弾いた横島の、真横からリジアが、前後から2m級の眷属がつっこんでくる。




「美神さん、さっき絶好のチャンスってどういう事です?」
おキヌが令子の後ろを飛びながら聞いてくる。

「充電器の私はともかく目や攪乱が能力のおキヌちゃんが乱戦状態で離れるのは
‘今から罠仕掛けます’て大声で宣言するようなモンじゃない。
 今みたいな一騎打ちなら別働隊からの不意打ち喰わないように遠くから見てても不思議じゃないわ」

まずは倉庫群の電源。気が付かれにくいように照明系統以外の電源を戻してゆく。
今度はおキヌが居るので楽々戻ってゆく。

「次は厄珍の所へ行くわよ!! 半分以上アイツのせいなんだから」

厄珍の所へ到着すると、豪華な中華式ベッドで令子やエミのナマ写真と共に幸せそうに眠っている。

まずはそいつらを破り捨て、問答無用で厄珍の幽体を体から引きずり出す。

「厄珍!! アンタのせいで大苦労してるのよ!! チクられたくなかったら、アレの在庫を全部お出し!!」
充電でパワーアップしたパジャマ姿の令子の幽体が厄珍(幽体)の喉頸掴んで天井まで差し上げる。

「れ、令子ちゃん!! 何のことかわからないアル〜〜!! 寝間着できてくれても、
 身体がない幽体ではなにも楽しくないアル〜〜〜!!」
ナイトキャップ付き寝間着姿の厄珍が半呆けた答えを返す。

その言葉で切れた令子は問答無用で厄珍(幽体)をどつきまわして身体ならぬ魂で理解させる。

おキヌと共に、厄珍の倉庫からブツ&女性の肖像権違反写真やデータを根こそぎ回収。

「もうすぐ人工幽霊一号が着くはずよ」


コブラが到着するとシロタマがいない。
彼女らを固定していた紐は霊波刀で斬られた跡を残してシートに落ちている。

「人工幽霊一号! 2人はどこへ行ったの!」
『お二人とも目を覚まして説明を聞くやいなや現場へ飛び出して行かれました』
「ゾウでも倒れる睡眠薬でなんでそんなに早く目を覚ますのよ!!」

チィッ!! 妖狐や犬神の回復力を甘く見たわね!
それに急転直下一騎打ちになるなんて想定してなかったからね。
事情知らないあいつら行ったら下手すると事態が紛糾するわ!!

「あいつら連絡の取りようががないわ!! とりあえずあるだけ全部積み込んで!! 急ぐわよ」
「美神さん!! 本当こんなものが効くんですか!?」
「本性甲殻類だからね。昆虫より本能がきついわ。横島クンに全裸美女よりは効くはずよ」

「・・・・効かなかったらこの人質使うんですね?」
急発進するコブラの運転席で、箱の中の傷ついたフナムシたちにヒーリングしながらおキヌがつぶやく。

「・・・・・・・GSも人間。汚れ役しなくちゃならない時もあるわ」
ほら、と厄珍の家で手に入れたキャビアと刺身を手渡す。

「ふふ、なんだかんだ言ってやさしいんですね」
それをフナムシの入った箱に入れてやりながらおキヌが微笑む。

「ま、元気でないと人質の価値下がるし。交渉で済めば安上がりだしね。どうせ厄珍のよ」
令子一流の照れ隠しにおキヌが思わず苦笑。

「で、あの、美神さん、私の紐、外して欲しいんですけど?」
「あいつらもがんじがらめに縛っていったわねー? 幽体の私じゃ外せないわ」
「じゃ、私が幽体離脱して外しますから」
「ダメよ! こんな高速で走ってるんじゃ意識無い肉体は縛られてなきゃ振り落とされちゃうわ」
「うぅ!! なんで私にはシロちゃんみたいな霊波刀がないんでしょう?」
「ま、縛られてるおキヌちゃんもかわいいからいいんじゃない?」
「私にその趣味はないです〜〜!!」
「冗談よ。直線になったら外したら?」



ガイィーン、キン
ズド−ン、ズシン


濃い海霧の中、倉庫前の広場で横島とマザーリジアが一騎打ち。
いやルシオラと眷属も参加しているので入り乱れて撃ち合っていると言った方が正しかろう。

それをリジアの子供達が遠巻きに見ている。


「先生があそこにいるでござる!」
屋根伝いに倉庫群へ急行していたシロとタマモが音で戦場を探り出す。

「あれは先生の霊波!! せんせー!! 闘いを止めるでござる! 美神どのどこでござるか!!」
シロが真っ直ぐ霧の中を音を頼りに横島の方へつっこんでゆく。

「単純バカ犬!! 正面から飛び込むんじゃない!! いっきなり飛び込んで戦が止めれるはず無いでしょ!!」
タマモが大声で怒鳴るも耳に入っていない
「それにしても美神さんもおキヌちゃんも霊波が感じられないわ! やられちゃったのかしら?!」 


「(ジャサ、ここで手をこまねいて見ているのか!?)」
2人の死闘を取り囲んだ3m級のフナムシの一匹がジャサに八つ当たりする。

「(お袋より良い考えがあるとでも? 少なくとも相手が違反するまでは手がだせん)」
「(違反するまでぼーっと待ってる気か?)」

「(んなことは言ってない。お袋の眷属の配置が見えんのか? 倉庫の敷地内に何が踏み込んでもわかるぞ。
  それより、小さな弟妹達は大丈夫なんだろうな?)」
「(それもあってイライラしてるんだ! 誰も泣き言1つ言わんが飢えて足許がふらついてきている)」

「(クソッ!! なんかアクシデントがあったら一斉にかかって仕留めるぞ)」
ジャサ自身もうっすらと明るくなってきた空を見ながらいらつく。このまま太陽が昇れば小さな弟妹にどれだけのダメージがあるか。

「(ジャサ兄さん、なんとか対人捕獲結界が完成した。眷属で描くわけにいかんからペンで描いたが、うまくいくか・・・・)」
別の2m級のフナムシが寄ってきて報告する。

ジャサがホッとした顔で頷く。
「(間に合ったか。対人吸霊力結界が作れないのが残念だが、援軍がいきなり現れたり、逃げられなければそれで良かろう。
  とにかく彼奴を仕留めんと食糧倉庫が危険で開けられん)」



ズドン!! 

令子に充電されたルシオラの霊波砲で最後の2m級の眷属が消滅する。

「後はあなただけよ?」
横島とルシオラが前後からマザーリジアを挟撃している。

ドゴン   「あんたたちも貰った霊力はほとんど使い切ったろう? それに私を祓う方法は見つかったかい?」
カン   「今からでも遅くない。降伏してくれ。あんたの子供達は責任もって新天地へ逃がそう」
キィイン  「有り難い申し出だけどね。その言葉を全面的に信用するには母親というものは疑り深いのさ」
ズドン  「本音で言うと俺もこんなとこで死にたくないし、あんだけ愁嘆場を見せつけられては闘う気も起こらん」

おキヌが心眼で見た心象風景はルシオラ経由で横島も知っているし、今までのフナムシたちの行動でも痛いほどにわかる。
『ルシオラ。まだ美神さんから連絡は入らんのか? このままだと『滅』か『消』でも使わざるをえんぞ』
『何も入らないわね。『爆』じゃ効きそうにないし、『縛』じゃ眷属一族に襲われちゃうもんね』

ザシィッ 「それはきっと本気なんだろうね。未だに切り札を使わないところを見ると」
チィン  「どういうことだ?」
ヒュンッ 「タナイスを消した技さ。あの気配は今まで感じたことがないよ」
ズシィン 「タナイス?」
ガイィーン「ああ、あんたたちが一番最初に殺した長男さ。親孝行な子だったんだけどね」

「やっぱりアレは眷属じゃなかったのか!!」
驚いた横島が思わず攻撃の手を止める。自分でも霊力がとことん消耗しているのがわかる。

「眷属にあの子ほど戦闘力のあるヤツはいなかったのさ。
 止めるヒマもなくつっこんでいったよ。力を探るんだって。おかげで大部慎重に行動できたよ」

マザーリジアも満身創痍、しかし堪えたふうもなく構え直す。

『もう貰った分はねぇ。もはや文珠しかないかな?』
『そんな感じね』



「せんせ〜〜!! 闘うのを止めるでござる!!」
その時、屋根伝いに来たシロが横島の胸に飛び込む。



「(援軍!! なんで外側の対人捕獲結界に捕まらなかったんだ!)」
「(よく見ろ人間じゃない!!)」
「(しまった!!退治屋は人間だと思いこんでたぞ!! かかれ!! かかれ!!)」
シロを援軍=協定違反と見たフナムシが一斉に襲いかかってくる。

「(お前達落ち着きな!! 援軍じゃないよ!!」
マザーリジアも焦って子供達に喚くが聞こえていない。
「(ちっ!! 焦って聞こえてないよ!!)」

「あちゃ〜〜!! あのバカ犬!! 周り見てから飛び込みなさいよ!! しゃあないか!!」

タマモも仕方なく横島の側に飛び降りキツネ火であたりを焼き払う。
もちろん効かないのは経験済みだが言ってられない。

その火を見てますますフナムシたちが荒れ狂って押し寄せてくる。

『ヨコシマ!! 仕方ないわ 文珠よ!!』
『ダメだ!! 親玉とはなされちまった!!』
霊力を使い果たした横島には3m級フナムシに効く武器はない。身を守ることすらままならない。
シロタマでは元々敵わない。

「仕方ねぇ!! ルシオラ!! 戻れ!! 文珠!!」
ルシオラと2人でシロタマを問答無用で抱え込み、文珠を2つ発動する。

ガキガキガキ!! バリバリバリ!!
 間一髪で発動した2つ文珠の強力な守護結界がフナムシの総攻撃を弾く。

「こんのバカ犬!! 周り見て飛び込みなさいよ!!」
「キツネがいきなり火を噴くからでござる!!」
文珠の結界の中で言い争う二匹。

「じゃかあしゃい!! 完全にお前らの共犯じゃ!! 言い争ってるヒマがあったら結界強化しやがれ!!」
ぶち切れた横島がグローリーで二匹の頭をはたく。
「きゃいん!!」「けーん!!」


高速を下りたところでルシオラから連絡が入る。

『美神さん!! シロちゃんとタマモちゃんが来て、
 援軍と勘違いしたフナムシたちが一斉に襲いかかってきて乱戦状態になったわ!』

「やっぱりか!! とにかく文珠でも結界でも使って生き残って!! もうすぐ行くから!」
『急いで!! フナムシたち興奮してしまって母親の制止も聴かない状態なのよ!!』

「人工幽霊一号!! 飛ばすのよ!! 法律なんか全部無視よ!!」

「み、美神さん、信号が赤です。ああっパトカーが群れで!! そ、そこは歩道ですぅっ!」

「コブラにイモなセダンが敵うはずないでしょ!!! 人工幽霊一号!!もっとスピード上げて!!
 今の私の霊力なら時速250kmでも大丈夫でしょ!!」

「し、しかしオーナー、明け方とはいえ街中では不測の事態が!!!」
コブラの後ろではパトカーが事故っているのであろう。盛大に爆発音やら衝突音が聞こえる。

「ごちゃごちゃ言うと建物ごと成仏させるわよ!!! 美神令子が運が悪くて事故るはずないでしょ!!」
風圧でチラシや落ち葉、さらには配られたばかりの朝刊を巻き上げ、ゴミ箱をひっくり返しながら街中を稲妻のように駆け抜ける。

「ああぁぁぁっ!!」

おキヌはやはりこの人には敵わないと思いながらも言葉にならない。
自分や横島さんの強運はやはりこの人について行っているからであろう。

エミの言葉が蘇る。
『戦いになると令子はバカみたく強運じゃない? あれもひとつのパワーなワケ!!』
信じてます。美神さん。

「速く!! 遅れると横島クンはともかくシロやタマモが死んじゃうわ!!」
横島クン信じてるわよ!! 2人が死んでたら折檻では済まさないからね!!

港に近づき、人家が減り、工場や倉庫が増えてくる。
「おキヌちゃん!! そろそろ射程距離内よ!! 心眼で位置特定して!! 一回きりだから気張りなさいよ!!」

「ハイ!!」勢いよく答えて心眼を全開にするおキヌ。

「氷室様によると、11時43分の方向・1626mの所を中心に直径54mほどに楕円型に分布。プログラム通り射出」
人工幽霊一号がコブラの後部トランクを開いて、多連装ロケット砲のようなもの出す。




スピンターンすると共に遠心力をも利用して、
ぽぽぽぽぽぽん。ぽぽぽぽぽん。
コブラの後部トランクから一気に打ち出される多数の直径20cmほどの丸い物体。


それらは放物線を描いてフナムシ達の群れの中にまんべんなく降り注ぐ。

霧の中、いきなり上から多数の物体に降りかかられ驚くフナムシ&横島。
「(な、なんだ!! 子供達、気を付けて!!)」
「手榴弾か何かか!! 美神さん!! やっぱり俺たちごと殺る気か〜〜〜!!!!」

文珠はフナムシの攻撃で壊れかかってるこれが最後なんや〜〜!! 

3つ目の文珠の結界の中に新たに描いた魔法陣の中でシロタマ共に必死で防御結界を強化する。
ちょっとでも霊力を上げるためにルシオラはとっくに影の中である。

ビッシっ!!。文珠の結界にひびが入る。バリン!! かなりのフナムシどもが上から落ちてくる物体を無視して押し寄せる。
「(こいつを早く倒さないとまた援軍が来る!!! 弟妹達が!!)」

そこに、落ちてくる茶色い物体。
「ひぃぃぃ―――っ!!! もうダメや〜〜〜っ」

ばらばらばらばらばら〜〜〜!!!

別に爆発することも煙を噴くこともない。

「?」

頭を抱えた横島が周りを見回す。そういえばフナムシが襲ってこない。
シロタマもきょとんとしている。


花戸小鳩(貧)発明・厄珍堂謹製 チーズ餡シメサババーガー。
自然農法の全粒小麦粉のパンにブルーチーズと北海道産大納言小豆の粒あん、それに酢を効かせたシメサバをアレンジした。
ソースとして、発酵オキアミとクサヤの合挽ミンチおよびホイップしない生クリームをたっぷり+(厄珍、改良特許出願済)。

ビタミン群は言うに及ばず、DHAとタウリンそして食物繊維と不飽和脂肪酸がたっぷりなヘルシーな体に優しい強制幽体離脱食品。
クサヤと発酵オキアミの防腐機能で2〜3日は常温保存ができる。
チーズ臭と魚臭さ、餡の甘さおよび生クリームのねっとりとした食感が口の中でとろける絶品。
少々のゲテモノ喰いや飢えた動物などでも幽体離脱させてしまうというスグレモノだ。


それらが多数、コンクリートに落ちて包装が破れている。


「(うぉぉぉおお!!! なんといううまそうな匂い!!!)」
その魚臭さがフナムシたちの敏感な触角を直撃する。

「(食い物だ!! 天佑か!!)」
「(毒は入ってなさそうだぞ!)」

食料庫を閉鎖され飢えていたフナムシたちが理性を忘れて飛びつき、ぱくついてゆく。
マザーリジアまでが持って生まれた本能に従って口に放り込む。

口に入れたとたんにトンでもない違和感が広がり魂が体から逃げ出す。

「「「ぐ、ぐぇ??」」」

ぽふぽふぼふぼふぼふぼふぽふっ!!!

魂が勢いよく体から脱出し、倒れてゆくフナムシたち。

「おキヌちゃん!! いまよ、お願い!!」
コブラで現場へ滑り込んだ令子の幽体とおキヌ。


令子は回復した倉庫群の高圧線から充電しながらおキヌに霊力を供給する。

明け方の港に響き渡るおキヌの全力のネクロマンサーの笛。心眼も全開でフナムシたちの生き霊を捉えている。
笛から発される強力な霊波は、チーズ餡シメサババーガーを食べなかった少数のフナムシたちをも行動不能にさせる。



マザーリジアの体から幽体が抜けたことにより、寄主を失った兵鬼が外へ漂い出る。

「アンタが皆を苦しめた元凶か!! 極楽にいかせてやるわ!!」
令子、おキヌの身体を借りて神通棍を握り、取り憑いていた兵鬼をぶん殴る。

「に、にあわね〜〜!!!」

袴を跳ね上げ、素早く立ち回る巫女姿のおキヌと光り輝く神通棍、それに憤怒の表情のミスマッチがすさまじい。
気のせいか横島には睫毛がとんがっていたように見えた。
横にふよふよと見慣れた姿と穏やかな表情で幽体のおキヌが浮いているからなおさらだ。

「くそ!! おキヌちゃんの体じゃ力が出にくいわ! 横島クン、お願い!!」

その言葉を聞くやいなやルシオラからの霊波砲と横島のグローリーが兵鬼を貫き、四散させる。


兵鬼から解放されたマザーリジアはジェノサイドXその他の効能が切れていたこともあり、
普通のフナムシの死骸に。さらに風に吹かれて飛び散る。

次の瞬間、みなそれぞれに普通のフナムシに、眷属達はフェードアウトして消滅。


「しまった!! アイツを葬るとリジアまで死ぬのか!!」


令子の頭にマザーリジアの言葉が響く。

『気にしないで。どうせ永く生きすぎたんだから。なるべく生かして処理しようとしてくれたのはわかったわ』
 今の言葉で信用したわ。 アンタの勝ちよ。言えた義理じゃないけど子供達をお願い』
マザーリジアが令子に土下座して懇願する。

が、ふっと頭を上げ、人型をとったマザーリジアの霊が令子の意識の中で、殺気の籠もった笑顔で肩を叩く。

『子供達殺したら祟るよ!! 相棒居ない時は気い付けな!』

「美神令子を脅そうなんて100年早いけど、期限内に滅んでくれたから出血大サービスで子供達は助けてやるわ!」
フン!! と鼻を鳴らして令子了承。

「そうそう厄珍の倉庫に残ったアイテムは全部貰っても文句は言われないわね。ま、ご苦労賃てとこね」


立ち上がった横島が再びへたり込んで令子の顔を見上げる。
「やっぱ、美神さんはいろんな意味ですごいですね。足許にも及ばないッス」
「わかったら、ちょっとは師匠として敬いなさいよ!」

あんだけの奴らに囲まれて生き残る横島クンもね。


「終わりましたね」
おキヌがやってきてお茶とヤモリを横島に手渡す。

「ああ。今日はキッツかった〜!! 何とか生き残ったってかんじじゃ〜!!」
それを受け取って一気飲みすると生き返った気分がする。

「そうですね。でも・・・ここにいればフナムシはしばらくは妖怪扱いされてみんな祓われちゃうんでしょうね」
「そだよな。おキヌちゃん。疲れてるだろうけどもう一踏ん張りお願いできるかな」

元の身体に戻ったおキヌの笛が響きフナムシを一か所に集め、その辺にあったトロ箱に入れる。

「あーあ、たかがフナムシにおキヌちゃんも人がいいわね。これはただ働きよ!!?」
令子の幽体がぶつぶつ言いながらも高圧線から霊力を補給してくれる。

「ほんとに素直でないでござるな」
「まったくね」
コブラの中のキャビアと刺身の入った箱を見ながら苦笑するシロタマ。

そこにパジャマ令子が上から三白眼で睨む。
「あ〜ん〜た〜ら!! 反省がないわね〜〜!! 私に命令を仰がずに行動した罪は重いわよ〜〜!!
 一週間肉抜き、お揚げ抜き!!!」

「「きゃい〜〜ん!!」」


「・・・・・」
一体マザーリジアに兵鬼を与えた霊体は何者なんだろうか?
ルシオラは“鳥のような白い羽をもつ人間みたいな格好の霊体”が気になっていた。
実際に会ったマザーリジアはもはやしゃべれない。
横島は些末なことしてもはや憶えていないようだ。それに姿形はどうにでもなるのであてにはならない。

だが、ルシオラが生まれながらに持っている知識からはそれに該当するのは一種類のみ。
しかしなぜその存在がこのような事をするのか?

「ルシオラ、どうしたのよ?」タマモが声を掛ける「終わったてのに考え込んじゃって」

「別に何でもないわ。あ、そうそう倉庫の残骸の中に人質達が居ると思うし回収してあげてね」

もしそうだとしたらどこへ相談すればよいのだろう。想像が正しければ妙神山というわけにはいくまい。
(ベスパかワルキューレに妙神山を通さずに連絡する方法か)

「シロちゃん、タマモちゃん。きっとまだどこかに人質が居るから探してくれない」
シロとタマモを振り返って頼む。
「前のチームが全員人質になってたとして、あと2人いるはずよ」

(ふっ、まさかね。魔族が与えたにしても代償もなさそうだし、神族はもっと動機がなさそうだしきっと考え過ぎね。
 気まぐれな仙人か年振りた妖怪が与えたんでしょう。美神さんもそんな考えのようね。
 はた迷惑なヤツ。見つけたらタダじゃ置かないわって言ってたし)

「まかすでござるよ」「わかったわ」
名誉挽回とばかりにシロタマが人間の霊気をかぎ出しにかかる。






人界ではない某所。外部の情報的・物理的・霊的攻撃から厳重に守られた、さほど大きくない部屋。
強力な霊体が満足そうに報告を受けている。

「大成功のようだな。たかがフナムシが人界最強の美神事務所と対等に闘えるようになるとは」
「フナムシから多少情報が漏れた可能性があります」
フナムシに与えた兵鬼の中の自身のかけらから情報を受け取っていたレイが付け加える。

「かまわん。見かけは妖力の活性化。神魔共に容疑がかからん。情報を分析したとしても上が動いた時は結果が出ておる」

手に持った真っ赤な葡萄酒が入ったグラスを掲げつぶやく。
「我が心の友だったアシュタロスよ。腐ったこの世を作り直すという貴様の理想は私が引き継ごう。
 貴様でも自分しか解放できなかったことが、作り物の我にできるかどうかわからぬがな。
 まあ、転生した貴様は草葉の影でのんびり見物していてくれ」

「私どもも今のやり方には我慢ができませぬ。なんなりとご命令を!!」
「アシュのおかげで何をやればよいのかがわかった。天秤が元にほぼ戻る、一年ほど後が勝負だな」

カシャーン!!

強力な霊体がグラスを下に叩きつけ、前で命令を待っているものたちの一人に声を掛ける。
「ミラー」
「はい」
「予定通り人界へ“逃亡”してくれ。追っ手はそこのシアとレイ。状況によってはリンにもいってもらう」
「わかりました。うまくいけば再びお会いすることはありませんが、ご成功を祈っております」
「すまぬ。だが、うまくいけばお前、いや我々総てが自由になる」


ミラーにとって最後の打ち合わせの後、宮殿の後庭でシア、レイ、リンにひっそり見送られながらその翼を広げる。

「ミラー。手加減はできないけどガンバ!」
「ふふっ。シアこそ手加減なしの私の攻撃に耐えれるかしら?」
「茶番劇では死ねないよ〜だ。死ねたらラッキー♪ ね、レーイ?」
「ホントねぇ。でも今回はうまくいけば死ねるのよねぇ」

わざとらしく純白のミラーが盛大なタメイキをつく。
「ふぅ。私は役目柄、死ねないの。じゃ、人界で。ひと月後に再会ね」


「最後の茶番劇のはじまりはじまり〜〜!! 最後くらいはシリアスにGo!!」
陽気に天を指さしてGo!Go!するのはプラチナのシア。

「シリアスな茶番劇ねぇ。くすっ! 確かにその通りねぇ」
澄んだ湖水のレイが口に左手の甲を当てて微笑む。

「ミラー 姉ぇ・・・お元気で・・・。これ」
薄桜のリンが見送りながら涙ぐんで両手に包みを持って差し出す。

「姉ぇ、は、やめてって! 歳かわらないのに!」
ミラーがリンから餞別を受け取りながら苦笑する。
「リンったらぁ! まぁったく。4姉妹でいっちばんパワーあるくせにぃ。いつまでもねんねぇなんだからぁ!!」
シアがあきれ顔。
「ミラー送る時くらいシャキッとしたらぁ?」

「毎度思うんだけどねぇ。あなたもその軽いノリ、似合わないのよねぇ」
全身、翼を含めて陽光を反射する白銀の甲冑に身を固め、大剣を佩いたシアにつっこむレイ。

「性格も姿も変えられないモン。しょーがないでしょ?」
深い澄んだ湖に湛えられた水のような目、同じ色のゆったりとした服装、透き通るような肌をしたレイに口をとがらせるシア。


何万回いや何百万回と聞いてきた妹達のいつもと変わらぬやりとりを背に飛び立つミラー。
300mにおよぶ輝くばかりの純白の翼、純白の黄金律の体躯そして純白の長髪を風になぶらせる。

黒い瞳とやさしげな微笑み、桜色の唇には似合わぬ言葉をつぶやく。
「後のこちらでのドタバタ劇も見ものなのにね。残念!!」

ヒュン!! 人界へシフトしたミラーが一瞬で消える。



「ラドウ。ミラーのダミーは?」
「ハッ、順調です。私それにシア、レイ、リン以外にはこの宮殿内部の者にも疑われておりません。
 短時間ならミラーばりの大立ち回りも、さらに自動消滅もできます」

「ご苦労。とりあえず今までどおり我に大不満な役を続けさせてくれ。ふう、ミラーが一番損な役回りだな」
「一番美味しい役目でもありますな」
「なんだ、あの役やりたかったのか?」
「当然でございます。このような勝負にこのラドウが後方で調整役とは」

「我と一心同体と思われておるお前が“逃亡”したら一発で計画が悟られるわ」
「このような時のためにミラーに2000年前から演技をお命じになった、
 意図も分かってはおるのでございますが」

「別に演技でもないがな。ミラーも現状に強く不満を持っておる。
 上に従う我に不平があっても不思議ではない」
「ふふ。だから美味しい役なのでございましょう?」

「うまくいけば、英雄よの」

強大な霊体が凄絶な笑みを浮かべる。
「うまくいかなければ、最悪、神魔人界総てが滅びるのう」

「それは“宇宙意志”とやらを利用して防ごうというのでありましょう?」
「滅ぼす気で行かなければうまくはいかぬ。以後はここは世界を滅ぼす秘密結社じゃ」
おどけた表情で副官にヤモリの黒焼きスティック“ゲッキー”を勧める。

「ま、その時はアシュタロス並みの悪名を買って我が消滅、いや転生ですむであろうよ」
「アシュタロスも転生まで。消滅は許されませんでしたしな。そうなれば御前はともかく私には何の褒美もありませんな」
ラドウも“ゲッキー”をつまみながら笑う。

「はは、皮肉だのう。では事前に“ゲッキー”10年分とらせよう。よろしく頼むぞ。ラドウ」
「相変わらず安くこき使いますな。しかもうまくいけば食べ切れませんな。ではこれは前払いと言うことで」
と“ゲッキー”を箱ごとかっさらうラドウ。

「あ、こら、まだだ!! これを手に入れるのにどれだけ苦労したか! 我はそうそう人界には行けぬのだぞ」

「御前、暗号通信が2件入っています。転送します」
インカムからのオペレータの声が2人の漫才に割り込む。

「オホン、ご苦労。(ふむ、ウリエルとベールゼブブからか)」
ラドウと共に内容は読みとると同時に通信記録消滅。オペレータにも内容・差出人はわからない。
「順調ですな」



「そういえば人界に行ったミラーはこれから“ゲッキー”食べ放題よねぇ。いいわねぇ。シア」
宮殿後庭でミラーの消えた空間を名残惜しそうに見ながらつぶやくレイ。

「あぁ〜〜!! そいえばそよ!! ミラぁ〜〜っ!! 自分ばっかイイ思いして〜!!」
「あうぅっ〜〜。 ミラー姉ぇに渡した餞別・・・・」
リンが目の前で両人差し指をつむつむしながら俯く。

「もしかして“ゲッキー”!! なんてことすんの!! リン!!」
「あの最後の2箱渡しちゃったの!! こないだフナムシの時に私が行って買いだめしたのアレでおわりなのよねぇ」
「ミラー!! やっぱ手加減抜きでぶちのめ〜〜す!!」
帯剣を振り回してシア激昂。

「シア姉ぇ。 1箱しか渡してないから・・・・」
「リンちゃーん。あなた明日から“ゲッキー”なしねぇ〜〜」
「レイ姉ぇ〜〜〜〜!!!」


「リンからの餞別何かしら?」
人界に到着したミラーが人間に化けて街中を歩きながらリンからの餞別をガサガサ開けている。

「あんまり時間はないのよね。ちゃっちゃと片っ端からやらないと」
リンらしいかわいらしいリボンがとれ、餞別の袋が口を開ける。

「あ、“ゲッキー”だわ。らっきー。今頃あの3人ケンカね。通信してからかってやれないのが残念!!
 とりあえずこれカレー味だから新発売のチーズ味買お」

事前情報に従い厄珍堂の暖簾をくぐるミラー。
まず、お仕事第1弾ね。

「おじさーん。“ゲッキー”チーズ味ちょうだーい」




そのころ、人界の某人工島の護岸。

まだほとんど生き物は居ない。そこに、いくつかのトロ箱を開いてフナムシたちを出してやる。
高く昇った朝日の中、トロ箱の中で餌をたっぷり食べたフナムシたちは思い思いの場所へ散ってゆく。

「・・・・ここは新天地だ。まだ食べ物がすく少ないだろうから少し置いていくよ」
リュックサックから魚の干物や干し肉、昆布などをおろし、波がかぶるあたりに石で押さえて動かないようにする。
東都大の理学部・工学部と太林組共同開発のエコブロックによる護岸。
今までのタダのコンクリート護岸と違いフナムシが住めるような隙間が多く、生き物が、海藻や貝がつきやすいようにできている。

「これだけあれば1週間は保つだろう? しばらくしたら魚が増えて釣り人がたくさん来るようになるよ。
 藻もたくさん生えるだろうし、そうすれば食べ物には困らなくなる」

ひときわ大きな、子供を抱えたフナムシが頭を下げたような気がして振り返った。
が、そこには新たに上陸してきたばかりの小さなイソガニが居るばかりだった。

「カニが住めるなら、きっとフナムシも住めるよな」

「先生、ここをサンポのコースに入れるでござる!! そうすれば毎日来て食べ物を置けるでござるよ」
シロが横島の右手に抱きついて上目遣いで笑う。

「勘弁してくれ!! 事務所から50kmはあるぞ!!」
「ヨコシマ。早起きして車道で行けば往復できるわよ」
「そうでござる!! ここで朝日を見ながらみんなで朝ご飯食べるでござるよ!!」
「ルシオラさん。私も一緒に行っていいですか?」
「おキヌちゃんどうやってついてくつもりよ?」
「私の中に入っていけばいいと思うけど、それだとちょっと霊力不足でヨコシマが車と衝突しそうになった時に引き上げれないわね」
「美神さんに行く前に“充電”してもらえばいいんじゃない?」
「じゃ、おキヌちゃんはルシオラの中で決定ね」
「俺もそれならルシオラに乗る!!」
「先生〜〜、それじゃサンポにならないでござるよー」
「そうよ、ヨコシマ。大丈夫よ!!私がちゃんと後ろから押したげるから!!」
「それが嫌だって言ってるんや―――!!! 白バイ振り切るような自転車なんて乗りたくねぇっ!!!」


「とにかく帰って寝よ? 疲れたし、眠くって眠くって」
霧もなく真っ昼間の陽光の下で、タマモが大あくび。

「あれ? そいえば声がなかったけど美神さんどうしたの?」

タマモの目の前にはごくフツーのフナムシにまとわりつかれて真っ白になった令子が浮いていた。


to be continued


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