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GS〜Next Generation Story〜

道標の向くままに


投稿者名:ja
投稿日時:05/ 5/ 5

「ここが、魔界」
 漆黒の世界が広がっている。
「そして、あれがゲイルの居城だ」
 カオスが指差す。
「乗り込むぞ」
 その時、城の一角で爆発が起こった。
「何?」
「行ってみましょう」
 五人は爆発の起こった場所に向かった。

「く・・・。十二魔の一人ラブラをここまで追い込むとは」
 魔族の前には一人の男が立っている。
「もう終わり?」
 相手は一人の神族であった。その手には一本の剣。それだけしか武器は持っていない。しかし、戦闘力は一方的だった。
「舐めるなよ。俺は十二魔でも最強クラスの力を持つ。ゲイル様の四人の親衛隊の一人だぞ」
「それで、その程度」
 明らかに実力が違っていた。ラブラの攻撃をあっさりとかわしていく。
「おおお!」
 斬りかかるが、片手で受け止める。
「所詮、魔族か」
 もう片方の手に霊力を集中させる。
「あばよ」
「!」
 霊波でライブラは消し飛んだ。
「次は誰だ?」
 そこには英夫一行が来ていた。
「おお、あなたは」
 英夫に近寄る。
「横島英夫様ですね?」
「あ、ああ」
「申し遅れました。私、神族のキラと申します」
と、頭を下げる。
「どうしてこちらに?」
「ああ・・・」
 事情を話す。
「そうですか。しかし、それには及びません。あなた様の力をお借りするまでもありません。ゲイルなど私一人いれば十分です」
 誇らしげに言う。
「確かに、さっきの霊力とんでもなかったわね」
 瑞穂がキラのほうを見る。
「一ついいですか?」
 美希が声をかける。
「あなた、こいつに弱みでも握られているのですか?」
 さきほどからの英夫に対する態度を見る。
「何を言ってるんだ?!このお方は我々神族にとっては希望の星だぞ」
 英夫は思い出す。自分が神族側にとっては優秀な戦士の一人であることを。
「あのー、俺は別に神族の為に戦っているわけじゃあ」
「ご安心を」
 まったく話を聞いていない。
「貴方様が成長するまではその身を守れというのが上からの指令です。どうしてもとおっしゃるなら、ゲイルを私が倒すところをご覧になりますか?」
「え?」
 思わぬ展開である。
『もしかして、ラッキー?』
「ぜひ!」
 即答した。

「ライブラもやられたようね?」
 ゲイルが目の前のバルコに問う。
「はい」
「親衛隊も落ちたわね?」
「ご安心を」
 その時、一人の魔族が入ってきた。明らかに他の魔族と格が違う。
「レオ?!」
 ゲイルの前に膝ま付く。
「所詮、ライラは親衛隊に名を連ねるのすらおかしかった男」
「そうそう、僕たちの方が相応しかったのにさ」
 二人の、そっくりの子供の魔族が現れる。
「ジェミン」
「・・・・」
 そして、もう一人音もなく現れた。
「サジタリアス。
 そうね。私、バルコを含めた残りの者たちこそゲイル様に仕えし親衛隊。必ずやあの者達を」
「期待しているわ」
 それぞれの魔族は消えていった。

「残る魔族はバルコ、レオ、ジェミン、サジタリアス、そしてゲイル」
 キラが先頭に立ち話し掛ける。
「残りの魔族全部私が片付けてご覧にいれましょう」
 その時、
「そうはいきません」
 目の前に女魔族が現れた。
「私の名前はバルコ。ゲイル様の側近を勤めさせていただいております」
 ゆっくりと近づく。
「で、何の用だ?側近自らお出ましとは、ついに焦りだしたか?」
 キラが剣を抜く。
「どう捕らえていただいても結構」
 全員の顔を見渡す。
「この先に三つの扉があります。それぞれに二人ずつお進み下さい」
と、後方を指差す。
「何がある?」
 カオスが警戒しつつも尋ねる。
「それぞれの扉に番人がいます。どの扉に進んでも番人を倒せばゲイル様の元に続いています」
「一つの道に全員で進めばどうなる?」
「ふふふ、さすがカオスさん。目の付け所が違うわね。でも、ちゃんと進んでくださいね」
「それともう一つ」
 今度はキラが問う。
「今、お前を倒せばどうなる?」
と、飛び掛るが、
「駄目よ」
 軽くかわす。
「じゃあ、お願いしますね」
 そう言って消えた。
「ちぃ、逃げられたか?」
「違うわ」
 亜紀が近づく。
「何?」
「汗、出ているわよ」
 慌てて額に手をやる。冷や汗がにじみ出ている。
「無理しないでいいわ。間違いなく、あいつ強い」

「さて、どうする?」
 問題の三つの扉の前に到着した。
「クジにしますか?」
「そうだな、それが公平だ」
 カオスが即行でクジを作った。
「よし、引いてくれ」
 そして、英夫と美希、キラと瑞穂、カオスと亜紀のペアに別れた。
「じゃあ、頑張れよ」
 それぞれが扉を開けた。

「本当に、貴方強いの?」
「何がだ。当たり前だろう」
 瑞穂とキラは廊下を歩いていた。
「じゃあ、その貴方が何であいつにあそこまで従うの?」
「あいつ?英夫様の事か?」
 驚きの声で答える。
「そうそう、あいつよ」
「何たる失礼な発言。英夫様に対して。英夫様の事を何も知らないのだな?」
 事情を話す、
「じゃ、じゃあ、あいつそんなに強いの?」
「強いなんてレベルじゃない。あのお方の力をフルに覚醒できれば魔族など・・・」
「へぇ・・・」
「俺はあのお方が生まれた時、魔族との戦闘中だった。衝撃を受けたよ。この世にこれほどのエネルギーを持った者が生まれるはずは無いとな」
「今はそれほどじゃないのにね」
「当たり前だ。今のあのお方のレベルでは力は使いこなせない。おそらく小竜姫様たちの封印が施してあるのだろう。もちろん、その封印をしたままでも力を使いこなせれば十分に強い。しかし、封印を解いた時の力はおそらく神すらも超える」
「か、神すらも?」
「そうだ、全知全能の神すらもだ」
と、その時、
「誰だ!?」
 複数の方向から霊気の矢が飛んできた。
「あまい」
 それらの全てをはじき落とす。
「気配は感じられないけど」
「ああ、俺もやっとだ」
 音も無く再び矢が飛んできた。二人はかわしていく。
「気をつけろ。一発でも食らえば人間なぞ、一たまりも無いぞ」
「解っているわよ」
 とはいえ、かわすのにも一苦労である。
「敵はどこだ?」
 キラが周りを見渡すが、姿は見えない。
「・・・おい、人間!お前巫女だろう」
「そうだけど?」
「何か感じないのか?」
 瑞穂は周りを見渡す。
「まったく感じないわね」
「ちぃ!」
 再び周りから矢が飛んで来る。
「卑怯な戦法ね?」
「ふん。まさか、正々堂々と正面から戦ってくれると思ったか?」
 矢を叩き落しながらキラが喋る。
「何か手は無いか?」
「手、といわれても」
 がむしゃらに攻撃すればいいというものでもない。
「こうなりゃ、周りをまとめて吹き飛ばすしかないが」
「それなら、一つ技があるわ。父さんに教えてもらった技だけど」
「よし、そいつをぶっ放せ」
「でも、準備をするのにとても時間がかかるの。その間、私は完全に無防備になる」
「それなら任せろ。その間は俺が防いでやる」
「頼むわよ」
 出会ってからそんなに時間が経っていないが、この男を信用するしかなった。
 矢が一斉に飛んでくる。
「いやあああ!」
 それらの全てを剣でなぎ払う。
「まだか?」
 瑞穂の方を見るが無心で瞑想している。
「な、何だ?」
 キラは矢を叩き落としながらそちらを注意深く見る。
「待たせたわね」
 目を開く。
「さあ、行きなさい!」
 いくつもの光が周りに飛んでいく。
「おお!」
 そして、それらの数発が何かを捕らえた。魔族の悲鳴がこだます。
「よし!」
 キラは一気に間を詰める。
「!」
 魔族・サジタリアスは虚を疲れて身動きが取れない。
「挨拶もなしに悪いな。あばよ」
 剣を一閃させた。

 やがて、二人が去った後に残された魔族の死骸はゆっくりと立ち上がった。
「・・・油断した」
 気配を消し不意をついた攻撃を得意とするサジタリアスが逆に虚をつかれた形でやられた。
「だが、次こそは」
 キラと瑞穂は今なら油断している。再び背後から襲おうとした時、後ろに気配を感じた。
「誰だ?」
 そこには、一人の男が立っていた。
「何者だ?」
「・・・敵の不意をついた攻撃、戦略的には悪くはないんだが」
 男はゆっくりと近づく、その手に剣を握る。
「く!」
 サジタリアスは矢を放つ。男はそれらをはじき落とす。
「あまり、好きな方法じゃないな」
 右手を前に出す。
 ボン!
 放たれた霊力によってサジタリアスは消滅した。

「長いですね?」
 亜紀がカオスに問う。
「ああ、しかし魔族の気配はまだ感じられんな」
 周りを警戒しながら歩く。
「おお、そうだ。ちょうどいい機会だから一つ尋ねたい事がある」
 亜紀の方を見る。
「何ですか?」
「ずばり、お主何者じゃ?」
 目は真剣だった。
「へ?私は氷堂亜紀ですが?」
「まだ、とぼける気か?」
 眼光がさらに鋭くなる。
「上手く霊力をコントロールして化けているつもりじゃろうが、相手が悪かったな」
「・・・」
「天才のワシにかかればお主が人間でない事くらい一目で解る。何か特殊な事情があるようじゃから皆の前では黙っておいたが」
「それで」
 亜紀は妙に納得した表情で言った。
「あのクジにも、何か細工をしておいたの?」
「そうじゃ。お主と二人きりで話すためにな」
「ふふふ。そうね、確かに私は人間じゃないわ。でも、安心して。別に貴方たちに害を与えるつもりじゃないから。しかし、よく気づいたわね?さすがわ【ヨーロッパの魔王】といったところかしら?」
と、若干の笑顔を見せる。
「それじゃ。お主は顔は笑っているが、心の何処かに何か哀しみを含んでおる。普通の人間には考えられんほどのな」
「・・・そう。貴方には見えるの。でも、この哀しみは私の運命よ」
「運命?」
「そう。私の運命と宿命に対する哀しみ。何故、私は・・・。そして、何故あの人は・・・」
「あの人?」
 遠い目をした亜紀をカオスは見つめる。
「貴方、随分と年をとっているわね?」
「ああ。700位じゃったかな」
「なら一つ教えて欲しい。どうして人は望んだ形で出会えないのか」
「何を・・・?」
「それは、叶わぬ事なのか?」
 その時、
「伏せて、ドクター!!」
 上を霊気が通過した。
「あれ?かわされちゃったね」
「本当だ、当たったと思ったのに」
 二人の子供の魔族が立っていた。
「僕たちはジェミン」
「悪いけど、死んでもらうよ」
 二人はカオスたちを囲むように回転する。
 亜紀は神通棍を手にする。
「まあ、待て」
 カオスが制する。
「一撃で終わらせてやろう」
 懐から拳銃を取り出す。
「お別れだ」
 一発で、片方の頭をぶち抜いた。しかし、
「くすくす。それがどうしたの?」
 一瞬で再生した。
「ほう、再生能力を持っているのか」
 さも、珍しいものを見たかのように言う。
「さあ、当たってはないけど、はずれでもないね」
「ならば、これならどうだ」
 数枚のお札を出す。
「ほれ、お主なら使えるじゃろう?」
「ええ、任せて」
 今度は逆側の魔族に投げつける。
「消えなさい!」
 大爆発が響き渡る。
「さすがね、現代じゃこんなに凄い威力のお札手に入んないわ」
「再生能力がある魔族は体のどこかに核を持っている。それが本体でもあるわけじゃ。さすがに粉々にされたら・・・」
と、カオスのめが見開く。
「ああ、ビックリした」
「そうだね」
 何と、次々と再生していく。
「な?核を壊せていないのか?」
「いいえ、あれほどの爆発の中じゃ、耐え抜いているとは思えない」
「再生型ではないのか?」
「それは、これを試してから考えましょう」
 もう片方にお札を投げつける。爆発を起こすが、同じように再生してく。
「え?どういうこと」
「くすくす、駄目だね」
「ぜんぜんだよ」
 ジェミンは二人を囲むように回転し始める。
「ほらほら」
「どうしたの?」
 次々と攻撃を繰り出していく。
「ちぃ!」
 カオスが拳銃で片方を撃つが再生していく。
「核はどこだ?まさか別の場所に?」
「いいえ。二人のうちのどちらかにあるはずよ」
「そうなると」
と、一つの仮説を思いついた。
「そうか!おい、片方を倒せ」
「え?無駄なんじゃ」
「いいか。ワシが合図したら同時に攻撃だ」
「あ、なるほど!」
 二人は構えを取る。ジェミンが左右から襲ってくる。
「今じゃ!」
 カオスは引き金を引き亜紀はお札を投げつける。
「!」
 ジェミンは二人同時に攻撃を受けて崩れていく。
「あの二人はもともと一人の魔族が分離したものなのだろう。つまり、二人の間を一つの核が亜空間を通じ行き来していたのだろう」
 辺りには煙が立ち込めている。
「妙だな、さっきからこの煙が止まない」
 次第に二人の姿を覆っていく。そして、
「残念だったな。この程度では」
「死なないんだよ」
 ジェミニン声が響く。
「このガスには毒が含まれている」
「このまま、死ぬんだね」
 しかし、
「な、何だ。この霊力は?」
 二人の前に一人の女性が現れた。姿こそ美しい女性だが圧倒的な霊力を放出している。
「お前、さっきの?」
「いや、こいつは人間じゃない!」
「・・・消えなさい」
 そう言って、手をかざす。断末魔の声すらも発せずままジェミンは消滅した。
「・・・・・」
 その目に哀しみを宿した魔族は姿を消した。
「おい、大丈夫か?」
 煙が晴れた後、カオスは亜紀を探した。
「ええ、何とか」
 咳き込みながら亜紀は姿を現した。
「よし、次へ進むぞ」

「どうだ?敵はいそうか美希?」
「まだですね」
 美希を後ろにまわして英夫は前に進む。
「まだ進めという事か」
 皆と別れたあと、この道を進んでいるがまったく魔族の気配が感じられない。
 その時、後ろを歩いていたはずの美希が横を歩いていた。
「何だ?」
 美希は若干の笑みを浮かべていた。普段の冷たさがまったく感じられず温かみを帯びた笑みである。
「しかし、久しぶりだと思ってね」
「は?」
「あなたと、こうして歩くのが」
「仕事とかで一緒だろう?」
「ふふふ。それとこれとは別よ。まるで、昔みたいね」
 そう言って少女の頃の笑顔を見せる。
 二人の関係は古い。幼少から妙神山で育った英夫は下界の人間と知り合う機会は皆無であった。しかし、唯一美希だけが親に連れられて英夫の所に遊びに来ていた。その頃から二人は仲良く遊んだ幼馴染である。そして、小学校に入ると同時に美希はGSの修行を始めだんだんと冷たい雰囲気をかもし出すようになる。その変化を英夫は普通に受け止めていた。
「何だよ、急に」
 英夫には別に戸惑った様子も無い。
「あの頃はヒデまでGSになるとは夢にも思っていなかったけどね」
「別になりたくてなったわけでもないけど」
「昔からそうね。何かに流されてなんとなく生きている。でも、不思議と悪い方向には進まない。貴方は運命に愛されているのかもしれないわね」
「運命か・・・」
『そういえば、あいつも運命がどうたらこうたらと言っていたな』
 一度だけ会った哀しみを浮かべた魔族を思い出す。
『何か変だな。あいつのことを考えると』
と、その時、美希の雰囲気が一変する。
「来ましたよ」
 美希が前を見据える。そこには一人の魔族が立っていた。
「待ちかねたよ。我が名はレオ。十二魔・最強の者だ」
「最強の十二魔。ハッタリか?」
と、美希の方を見る。
「いいえ、あながち嘘とは思えません。この者から感じる霊力、今までのとは桁が違います」
と、精霊石を構える。
「ヒデ、行きますよ!」
「おお!」
 ヒデが剣を手に持ち突進する。その後ろから美希が精霊石を数個投げる。精霊石は英夫を守るように進む。
「せい!」
 英夫が一太刀浴びせる。レオは受け流すが、横から精霊石がレーザーを放つ。
「ほお。いいコンビプレーだ」
 英夫が隙を作り美希が攻撃を加える。そして、英夫を美希の精霊石が守り美希を英夫が守る。美希が考えた陣形である。
「なかなか厄介だな」
 レオはレーザーの応酬と英夫の剣技の前に苦戦している。
「本気で行こう」
 突然、レオの力が上がる。
「ヒデ、油断したら駄目よ」
 精霊石を操りながら注意する。
「しかし、こいつ強い!」
 剣術では英夫に分があるが、霊力自身はレオの方が上である。
「こうなったら」
 精霊石がレオを囲む。
「これならどうです?!」
 光の柱が昇る。しかし、霊力を放出して耐えている。
「効かぬわ!」
 息が荒くなったとはいえ、無傷である。
「何か凄いぞ?」
 英夫が美希の近くに立つ。
「でも少しは効いているみたいです。つまり、あのレベルの攻撃なら多少なりともダメージを与えられるという事です」
「しかし今の技、美希の中でも最高の攻撃じゃあ?」
「はい。今現在、私の精霊石を使った技の中ではあれほど出力を高められる技は他にありません」
「と、なると、俺が何とかするしかないのか?!」
と、剣を構える。
「いいえ、一つだけ手があります」
と、精霊石を手に納める。
「そんなのがあるのか?」
「ひどく、嫌いな技ですが、背に腹は代えられません」
と、構えを取る。
「はははは!そっちの女性は武術の心得でもあるのかな?」
 レオが余裕を見せる。
「多少はありますよ。ただし、私は肉弾戦とやらが嫌いでしてね、今まで使う事はあまり無かったのですが」
 霊気の渦が美希の周りを回っている。
「ヒデ、行きますよ。私に着いて来られますか?」
 霊気の渦が収縮する。やがて物質化し美希の体に付着する。まるで鎧のように。
「魔装術」
 蒼く輝く鎧に美希が身を包む。
「!」
 一瞬でレオの間合いに入った。
「は、速い!」
 そのままレオを殴り飛ばす。
「舐めるなよ!」
 今度はレオが間合いを詰め剣の応酬を繰り出す。それらを美希は余裕でかわす。
「その程度ですか?」
 カウンター気味に打撃を二,三発加える。
「貴方は霊力は強いかもしれませんが、肝心の使い方がなっていませんね。先ほどからのヒデとの戦い振りを見て貴方のクセも見破らせて頂きました」
「何だと?」
「ヒデ、今ですよ」
「おお!」
 美希が横に飛ぶのと同時にヒデが間合いに入る。一瞬の隙もつかせぬコンビプレーであった。
「せい!」
 英夫がレオの剣を弾き飛ばす。
「まだまだ!」
 レオは霊波刀で攻撃を加えようとするが、
「こっちですよ」
 美希が横から打撃を加える。
「ちょ、ちょこざいな!」
 体制を整える。
「よし!」
 横島からもらった文殊に【爆】の文字を刻む。
「行け!」
 大爆発が起こる。その中からレオが伸び上がってくる。しかし、
「残念ですが、お別れです」
 美希の手から放出された霊力にレオは吹き飛ばされた。
「よし!」
 英夫は手にサイキックソーサを作り出しレオに投げつけた。大爆発が空間を占めた。

「気をつけろ。何が出てくるか解らんぞ」
「ええ」
 キラと瑞穂のペアは広い空間に出た。その時横から気配がした。
「誰だ?!」
 キラが剣を抜く。そこにはカオスと亜紀が立っていた、
「無事だったか?」
「ああ」
 互いの無事を確認する。
「ようこそ、皆さん。ご苦労様でした」
 突然声が響く。そこにはバルコが立っていた。
「三組中、二組ですか。まあ、後の一組の相手は十二魔最強の霊力を持つレオですから、結果は見えていますがね」
「残念だったな。あの小僧たちはそう簡単にやられんよ」
 カオスが答える。
「それは、楽しみです。では主役無しのパーティを始めましょうか?」
と、四人を見渡す。
「言っておきますが、私は強いですよ。霊力最強は確かにレオですが、こと戦闘においては私の方が上ですから」
 それは四人も十分に察知した。彼女からかもし出る圧倒的な力を。
「どうしました?来ないんですか?なら・・・」
と、姿が消えた。
「こっちから行きましょう」
 一撃を加えるとキラが吹き飛んだ。
「見えない?!」
「まさか、この程度ですか?この程度なら、他の十二魔も何をしていたんでしょうかね」
「いい気になるなよ」
 キラが起き上がり剣を持ち切りかかる。それをあっさりとかわす。
「剣術というのを教えてあげましょう」
 剣を抜き斬撃の応酬を繰り出す。キラは必死でガードをする。
「下がって!」
 亜紀が横からお札を投げつける。キラが飛び下がる。しかし、お札をバルコの剣が真っ二つに切った。
「それで?」
 さらに、横から瑞穂が投げたお札がバルコに飛んでくる。それも斬った。しかし、
「油断したな」
 カオスが拳銃を撃った。
「それも予測済みです」
 いつの間にかカオスの背後に回っていた。そのまま壁に叩きつける。
「大丈夫?」
 亜紀と瑞穂がカオスに近寄る。
「まあ、頑張った方です。さよなら」
 手から霊力を放出した。三人を直撃するはずの霊力は、突然目の前に現れた結界に阻まれた。足元には【防】の文殊が落ちていた。
「やっと、主役登場ですか」
 英夫と美希が現れる。
「その様子だと、レオもやられたようですね。楽しみです」
「さあ、上手くいくかな」
 英夫が剣を抜く。
「気をつけてください、レオとは格が違います」
「そのようだな」
 一瞬で間を詰める。剣の応酬が続く。
「少しは出来るようですが、まだまだです」
 あっさりかわす。しかし、横からは美希の精霊石による攻撃が飛んでくる。
「ほう、いいコンビネーションです」
「英夫様だけに、苦労はかけられん」
 キラも攻撃に入る。
「離れて!貴方じゃあ、無理だ」
 英夫が叫ぶ。
「何を言ってるんです。私はこれでも神界では・・・」
 その時、美希のレーザーが掠める。
「同士討ちになります。貴方は離れてください」
 美希の声が飛んでくる。
「・・・仕方ない」
 キラはカオスの元へ飛びヒーリングを始めた。
「埒があきませんね。やったことは無いのですが」
 美希は構えを取る。
「魔装術」
 蒼い鎧に身を包む。
「魔装術と精霊石の同時使用。私の精神力は持ちますかね?」
 まるで、誰かに問い掛けるかのような声だ。そして、バルコの元へ飛ぶ。
「くっ!」
 英夫と美希のコンビネーションに精霊石の攻撃。徐々に追い込まれていく。
「よし!」
 二人が一斉に飛び下がる。バルコの周りを精霊石が囲む。
「さよならです」
 青い光の柱が昇る。そこに、英夫のサイキックソーサと文珠がとどめに飛ぶ。

「さて、残るは一人だな」
 英夫と美希は先程の戦いで消耗している。
「ご安心を英夫様。最後の魔族は私が倒してご覧に入れましょう」
 キラが剣を構える。
「そうですか。それは楽しみね」
 突然、後ろで声がした。そこには一人の女魔族が立っていた。
「始めまして、私がゲイルよ」
 ただ、立っているだけだった。それだけで、周りを圧倒した。
「どうしたの?さっきまでの意気込みは?言っておくけど、バルコを倒した二人が回復するまで待つほど私はお人よしではないわよ。何しろ私は、横島英夫が邪魔なんだから」
と、英夫を見る。
「理由は、解っているでしょう?せっかく起こった神魔戦争。神側の強力な切り札は早めに消さないとね」
「そうはいかない。神側はあの強力なカードを今失えないんだよ!」
 剣を取り、一気に間合いを詰める。
「ふふふ、それじゃあ駄目」
 紙一重の間合いで見事にかわす。
「くっ」
 次々と攻撃を繰り出すが全てかわされる。
「確かに、悪くないわね。私の部下がやられたのも頷ける。でも」
 右手を一振りしただけでキラは吹き飛ばされた。
「相手が悪かったわね」
 顔こそ笑っているが、圧倒的な魔力が出ている。
「笑わせるな!」
 カオスが拳銃を撃つ。それすらもかわす。
「えーい!!」
 瑞穂の放ったいくつもの霊力がゲイルに向かう。それらの全てをはじきおとす。しかし、いつのまにか亜紀が間合いを詰めている。そして、お札を何枚か投げつける。
 強烈な爆音の後、無傷のゲイルが立っていた。
「それで?もうおしまいかしら?」
 余裕であった。
「おい、美希。お前、確かヒーリング出来たよな?かけてくれないか?」
 英夫が横を見る。剣を持つ体力すら残っていない。
「そうしたい気も山々ですが」
と、右手を見る。
「どうやら、こっちもガソリン切れのようです。やはり、魔装術は疲れます」
「そんな、のんきな事言っている場合じゃ」
「・・・」
 美希は考え込む。そして、
「ああ、一つだけ手があります」
「何、まだ奥の手があるのか?よし、やってやれ」
と、ゲイルを指差す。
「はあ?何を言ってるんですか」
と、立ち上がる。
「貴方の両親に託された封印です」
 英夫を見る。
「あ・・・」
 英夫は思い出した。
「しかし、あれは」
 戸惑っている。
「最後の手段です。普通にやったらゲイルには勝てません。いいですか?押さえ込む自信がありますか。どうやら、貴方の封印はとんでもない力を封じたようです。それを抑えこめなければ、おしまいです」
「・・・やってくれ」
 美希の手から精霊石が舞い上がる。
「【解】!」
 硬質ガラスの割れたような音が響き渡った。
「へー、何も変わっていないようだけど?」
 先程から様子を見ていたゲイルが言った。
「少し、期待していたんだけど」
 英夫は自分の姿を見る。何も変わっていない。
「どうなってるんだ?何も起こらないぞ」
「そんなこと、私に言われても困ります」
 その時、亜紀が英夫に近寄る。
「今の封印はただリミッターを解除しただけ。その臨界点まで霊力を高めないと同じよ」
 その、哀しみのこもった瞳で英夫を見つめている。
「き、君は・・・・」
「私のことはどうでもいい。文珠があるでしょう。それで何とかできるはずよ」
「あ、ああ」
 英夫は文珠を手に握る。
「よーし!目覚めろ、俺の力よ!」
【覚】【醒】の文字が刻まれた文殊が光を上げる。そして、変化が起こった。

「ん、どこだ。ここ?」
 英夫は真っ暗な中にいた。
「おーい」
 呼びかけるが返事は無い。
「とうとう、ここまで来てしまったのね」
女性の声が響く。ゆっくりと魔族の女性が姿を現した。
「私は、ルシオラ。はじめまして、かしらね?」
 英夫に近付いてくる。
「最後の扉の鍵を開けにきたのね」
 ルシオラが指差す。そこに二人の人間がいた。何か、結界に囲まれている。英夫が近付くと、結界が砕けた。
「何だ?」
 獣人の姿をした人間と、黒衣を纏った人間がいた。獣人の方は見て取れるが、黒衣を纏った方は姿が薄れている。
「こちらの方は、まだ使えないわね。いえ、あなたでは、この力を使う日は来ないでしょう」
 黒衣を纏った方に近付く。
「これらを使いこなすには、あなたの【怒り】と同じく鍵がいる。あなたはそれをもっているかしら?」
 ルシオラの姿が薄れていく。
「あなたたちは誰?」
 英夫の問いに、獣人が答える。
『汝、力が欲しいか?』
 英夫の頭に直接響き渡る。
『汝、あの魔族を倒す力が欲しいか?』
 再び問い掛けられる。
「ああ。欲しい。俺は、皆を守りたい」
『ならば、欲しよ。望め。【欲望】こそ我が力!!』

「う、うそ・・・」
「そんな・・・」
「何だ、こいつは」
「これが、最強の戦士」
 英夫の姿は豹変した。頭からは龍の角が生え、瞳には第三の目が開き、長い牙を生やした。
「こ、こんな化物が・・・」
 ゲイルは明らかな恐怖を覚えた。目の前の者は明らかに次元の違う力を持っていた。
「おおおお!」
 英夫は一気に間合いに入った。
「は、速い!」
 ゲイルは防御の姿勢をとるがその上から物凄い衝撃が来た。
「がああああ!」
 獣の咆哮に似た叫び声を上げながらゲイルに攻め立てる。
「な、何なの?こんな化物が存在していたなんて」
 逃げるので精一杯だ。
「神は、こんな人を扱えるのか?」
 キラは呆然と見ている。
「こんな物を封印していたのか?小竜姫達は」
 カオスの長い人生の中でこれほどまでの霊力を感じた事は無い。人間はもとより魔族、神族を含めて。その時、英夫がゲイルを追い詰める。
「ああああ!」
 断末魔と共にゲイルは消滅した。
「終わったな」
「ええ、でも・・・」
と、瑞穂は英夫の方を見る。
「あいつ、どうするの?おそらく自我なんて吹き飛んでいるわよ」
「任せて。私が抑えとくから封印よろしくね」
 亜紀が手から霊力を放出する。
「く、長くは持たないか?!」
「あの人は、いったい。そんな事より、美希さん」
「任せてください」
 精霊石が英夫の元へ飛ぶ。
「【封】」
 鐘の音に似た音が響き渡る。そして、英夫はもとの姿に戻っていた。
「え?あれ?俺、今まで何を?」
 英夫は辺りを見渡す。
「あ?ゲイルは?!」
「倒したわよ。貴方が」
 瑞穂が近づく。
「どうやら、覚えていないようね」
「どうやら、力のコントロールにはまだレベルが足りなかったようです」
 美希も近づいてくる。
「じゃが、結果オーライだな」
 カオスが懐から小さな数本の杭を取り出す。
「さあ、人間界へ帰るぞ」
 それらを打ち込み結界を張る。
「つもる話はその後じゃ。お主はどうする?」
と、キラの方を見る。
「私も神界へ帰らねばなりません。ここで失礼させていただきます」
 キラの姿が消えた。
「さあ、行くぞ」
 結界が輝きだす。その時、亜紀が英夫に近づきそっと腕を握る。そして、全員の姿が消えた。

 先程まで死闘が繰り広げられていた空間に突如一人の魔族・カインが現れた。
「素晴らしい。今の力を完全にコントロールできた時こそ、我が願いが叶う時」
 英夫の豹変振りを思い出す。
「あれほどまでの力とはな。神族の連中が期待を込めるわけだ。確かにあの力が加われば魔族側への決定的な切り札となる。だからこそ、魔族側としてみればあの力を早めに摘んでおきたいところか?ゲイル」
 ゲイルが蹲っていた。
「そうだよ。そして失敗に終わったのさ。あの力は危険すぎる。下手をすれば魔族を壊滅しかねん」
「ふふふ、しかし生きていたとわね」
「逃げるくらいどうってことない。相手は素人の集団だからな」
「確かに彼らはGS。魔族相手の戦いは慣れてはいない。しかし、今回君たちとの戦いの中で経験を積んだ。よりいっそう強くなる」
「まさか、それが目的で?!」
「当たり前だ。私の目標はただ一つ。横島英夫がより強くなる事だ。そのために踏み台として【バランサー】を仲間に取り入れたんだからな」
「【バランサー】?まさか、さっきの・・・・」
「ふふふ・・・。さらに面白くなるぞ。後、一悶着あるのだからな」

「皆、無事か?」
 カオスが全員を見渡す。
「あら、お帰りなさい。その様子だと魔族は片付けたようね?」
 ひのめが迎えにきた。
「ええ。最終的にはヒデの力に頼りましたが」
と、後ろを見る。しかし、英夫はいなかった。
「ヒデ?」
「亜紀さんもいないわ」
 瑞穂が辺りを見渡す。
「そうだろうな」
 そこにはカインが立っていた。
「カイン?」
 全員が構える。
「おっと!心配するな。別に消耗しきったお前たちなど相手にはせん」
 と、両手を上に上げる。
「ヒデはどこですか?」
 構えを解かずに美希が問う。
「くくく。お前たち気づいていなかったのか?」
「何にです?」
「お前たちといた、あの女だよ」
「亜紀さん。彼女に何を」
「何もせんよ。ただ、あいつは・・・」

「ここは、どこだ?」
 英夫は辺りを見渡す。本来なら人間界に戻っているはずが、また別の空間に飛ばされたようだ。
「何で、こんな所に?」
「お久しぶりね」
 横を見ると亜紀が立っていた。
「?何を言って・・・?」
「まさか、気づいていなかったの?」
 さも心外そうに言う。
「・・・ノアか」
 一瞬で亜紀の姿はノアの姿へと変貌した。
「解っていたのね」
「確信はしていなかったが、うすうす感じてはいた。どうりで会った事あるはずだ」
 最初の出会いを思い出す。
「ああ、あの時ね。少し、嬉しかったわ」
 最後の方は聞こえないように言った。
「何の用だ?」
「決まっているでしょう。忘れたの?私と貴方の関係」
「・・・」
 剣を構える。
「そう。私と貴方。こうなるのは運命で決まっていたのよ」
 空間から剣を取り出す。そして、二人の戦いが始まった。
「どうしたの?その程度?」
 英夫の攻撃をあっさり受け流す。
「くっ!」
 英夫は斬撃を繰り出すがことごとくはじかれる。
「ふふふ・・・」
 ノアが間合いを取る。
「楽しいわね?」
「お前だけだ」
 英夫が一瞬気を抜いた瞬間にノアは目の前に来ていた。
「駄目よ。戦場で油断したら。それだけで終わりよ」
 確かに今剣を繰り出せば英夫はやられていただろう。しかし、
「そのセリフ、そっくり返すぜ!」
 文殊に【閃】の文字を刻み炸裂させた。
「やるわね」
 ノアは再び間合いを取る。今度は英夫は警戒心を解いていない。
「そう、それでいいの」
 剣を構える。
「何が目的だ?」
 さきほどからノアは本気で戦っているように思えない。
「そうね。ただ、貴方を強くして欲しいと頼まれたから」
「カインか?」
「そう。貴方には強くなってもらって・・・」
「カインと戦うためか?」
「半分当たり。でも、もう半分は・・・」
『貴方に強くなって生きて欲しいから』
「あ?」
「さあ、もう行かなくっちゃ」
 ゆっくりと構えを解く。
「一緒に戦った二人の女の子にヨロシクね」
「え?」
 その時、哀しみに満ちた表情が一瞬笑顔に満ちた。そう、まるで天使のような。
『こんな顔も、できるんだ』
 英夫はただ驚くだけだ。だが、それも一瞬の出来事だった。刹那に、また哀しみに満ちた表情に戻る。
「次会う時は、手加減しないわよ」
「なあ・・・」
 英夫が声をかける。
「俺達って、戦わなければならない運命なのか?」
「・・・私が魔族で、貴方が神族の味方である限りはね」
 その表情にさらに哀しみが灯る。
「残念だけど、それが貴方の宿命。そして、私の運命と存在理由」
と、空中に身を躍らせる。
「もう一つ、手があるとすれば・・・」
と、姿を消す。
『私と貴方で、何処か遠い世界へ』
 英夫は一人空間に残された。
「なあ、何で俺はあいつと戦わなければならないんだ」
 ノアの悲しみに満ちた表情を思い出す。
「何であいつと戦う時、俺まで哀しいんだ?」


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