「と、いうわけで今日からこの横島英夫君がわが事務所にて働くことになりました」
ひのめが彼を紹介する。
ひのめの事務所は美神令子から受け継いだ物で、今では所員十数名を抱える大所帯である。
「横島英夫です。GS免許を持っているとはいえ、除霊なんかしたこともないので、よろしく・・・」
そこでどこからかスリッパが飛んでくる。
「そんな事自慢してどうするんですか!?」」
投げた張本人が詰め寄ってくる。
「まあ、この二人は昔から漫才が趣味なので気にしないでやってください」
ひのめの一言に周りが爆笑する。
「じゃあ、美希。ついでだから世話してあげなさい」
「え?」
直々のご指名に驚く。
「い、嫌です。私は今日除霊に行かないといけないんです」
「じゃあ、連れて行ってあげて」
「お断りします」
「いいから、いってらっしゃい。スーパールーキー君をよろしくね」
「だから、こんなバカ嫌です」
と、言う美希にひのめが顔を寄せる。そして、小声で呟く。
「彼、非公開ながらいくつかの事務所が目をつけているらしいよ。何しろあの横島忠夫の子供で、試験でのあの活躍ぶり。最近悪霊は強くなっていくし、強いGSがいることに越したことはないものね」
と、英夫の方をチラリと見る。
「彼、生活に困っているみたいだから、少しお金を積まれればあっさり行っちゃうわよ。そして、美人のGSに手取り足取り教えてもらううちに・・・こう、ムラムラっと」
「わ・・・わかりました」
白旗を揚げながら引き受けた。
「で、今日は何処に行くんだ?」
英夫が楽しそうに話しかける。
「今日は、土地に憑いた地縛霊の除霊です。
そこの土地にビルを建てたいらしいのですが、霊が住みついていて作業ができないらしいです」
「なるほどね」
と、英夫は考え込む。
「なあ、その霊って、誰?」
「ああ。前の持ち主です。事故で亡くなったらしいのですが、成仏できずにいるのでしょう。そこの土地を未だに自分の物だと考え、邪魔をしているのでしょう」
「………」
英夫の表情が固まる。
「なあ、その霊って除霊していいのか?その霊は、別に悪意があるわけでは無さそうだし」
その発言に美希は少し驚き、子供を相手にしているかのような柔らかな笑みを一瞬浮かべる。しかし、すぐに冷静な顔に戻る。
「相変わらずですね」
「え?」
「いえ、ヒデの言っていることは立派ですが、このまま放っておく方が危ないのですよ。現在の土地の持ち主はもちろんのこと、取り付いている霊も成仏できずに永遠にこの世の中を彷徨うことになります。GSはそういった仕事です」
「そうか。なら、仕方がないか」
そして、美希が少し前を歩く。。
『ヒデ、あなたにはGSは向いていませんね。あなたは、GSとしては致命的な欠点があります。心の根が誰よりも優しすぎます』
「まあ、そういうことで、頑張りましょう」
「いいですか?と、いうことでこの土地の除霊をします」
広い土地の中に二人は立っている。
「まず周りに結界を張ります。
「少し今日は不安なので・・・」
「何が?」
「あなたがです。今日は精霊石の結界を張ります。普段は悪霊が逃げないためだからお札で十分ですが・・・」
と、数個の精霊石が土地の周りに飛んでいく。
「結!」
一瞬で強力な結界が張られた。
「さて、後はあなたの仕事です」
と、一歩引き下がる。
「あそこに霊がいます」
と、右の方を指差す。
「除霊してください」
「そ、そう言われてもな」
「GS免許はダテじゃないと言うところを見せてください」
「よ、よし!」
と、構える。そこで、美希はあることに気づいた。
「そういえば、あなた除霊道具持っていましたっけ?」
「ああ、神通棍を持っているぜ!」
と、見せる。
「まあ、あの程度なら神通棍で・・・」
と、英夫の神通棍を見る。
「え?」
そこには『GS免許試験管理委員会』と書かれていた。
「な、パクッて来たの?!」
「あほ!人聞きの悪い事言うな!返すの忘れていただけだ!」
「あのね・・・」
どんなGSでも最低限の武器は持っている。現に美希も除霊ではめったに使わない神通棍やお札といった基本的な道具は持ち歩いている。おそらく、試験のときに借りた神通棍を盗んで使用しているのは彼くらいだろう。
「神通棍くらい買いなさい」
「金がない」
キッパリと言い放つ。
「も、もういいです。見なかったことにしてあげるから、さっさとやっちゃってください」
「ああ」
と、神通棍を構える。
「伸びろ!」
シーン!
全く剣が伸びる気配がない。
「おかしいな、これでいけたんだが」
「あの、ヒデ。霊力は?」
「使い方が解らん」
「・・・・もういや」
美希が座り込む。
「疲れてんのか。まあ休んでろ。
ルシオラさん。何とかしてください」
頭の中に問いかける。
『仕方ないわね』
神通棍から剣が伸び上がる。
「よし!」
「え?ヒデ?まさかと思いますが・・・・」
「行くぞ!極楽へ・・・!」
「待ちなさい!いくらなんでも、力入れすぎ・・!」
大爆発が起こった。
「え、えーっと。僕はお腹が空いたのでそろそろ帰らしてもらおっかな・・・」
と、後ろを向けて歩き出そうとする。
「ヒデ・・・」
きっと地獄の釜が空く音はこんなのだろうなと思いながら背後を見る。
「どういうつもりですか?」
こういった状況でも冷静さを失わない美希はある意味怖い。
「まあ、悪霊も倒せたし・・・」
「ええ、倒せましたよ。キレイサッパリ。跡形も残らずにね」
結界内は一面焼け野原である。
「やりすぎ?」
「どこの世界に悪霊一体倒すのに魔族一ダース片付けるだけの霊力出す人がいますか?!」
「ここに、しかと!」
「まるで、幼子に核ミサイル持たしているみたいだわ」
「まあ、悪霊も片付いたし、いいんじゃない?」
「よくありません!私が張った結界がなかったら、被害はもっと大きかったんですよ!」
「で、でも・・・」
「解りました。私が力の使い方を教えてあげます。丁度、来週からGW休みがありますから、その間に合宿をします」
「ええ?本当か?!」
「霊力を高める修行じゃなくて、高すぎる霊力を使う練習だなんて、いったいどうなってるの?」
虚空に投げかけた。
「カイン様!」
カインの前にノアが膝まずく。
「ノアか。どうだ、あの横島英夫君は?」
「間違いなく、もっと強くなります。おそらく、有史上最強の戦士となりうるでしょう」
「そうか。それは楽しみだ」
「ただ、時間がかかります。今はまだ力の一部ですらコントロールできていない状況です」
「気長に待つさ。魔族は長命ゆえ気が長い」
「しかし、そうはいきません。おそらくゲイル派が動き出すころかと」
「何、ゲイル派だと?!むう、横島英夫が未熟な時に消そうとする魂胆か」
「はい、我々とは対極に位置するグループです」
「それは不安だな。我々はあの男により強くなってもらわなくては困る。ノア」
「お任せください」
と、姿を消した。
「ノアか。私の『心眼』の能力をもってしても、奴の心の中までは読めんな」
「と、いうわけで、来週の連休中に修行に行きたいのですが」
ひのめに美希が許可をもらう。
「ふむ。悪くないわね。丁度、社員旅行にでも行こうかと思っていたのよ。今回の社員旅行は修行がてらということで・・・」
「え?一緒に行くんですか?」
「当たり前でしょう。社員旅行よ社員旅行」
「でも、私はヒデと行くのですが」
「いいじゃない、皆で行きましょう」
「しかしですね」
それでも食い下がろうとする美希に、
「は、はーん・・・」
ひのめが怪しい目つきで見る。
「解ったわ。英夫くんと二人っきりで旅行がしたいのね?そうよね、美希ちゃんも高校生だもんね。解るわー」
「ち、違います!誰があんなアホと!!」
「じゃあ、決まりね」
「・・・はい」
美希は渋々了承した。実際、ひのめが言っていたことのほとんどは当たりである。
「はーい、皆さんバスに乗ってください」
バスには『美神除霊事務所社員旅行』と書かれていた。
「おい、美希。何なんだ?これは?」
「・・・成り行きです」
美希はまだ落ち込んでいた。
「では、出発します」
バスガイドがいろいろと喋りながらバスは走り出した。
「英夫くん、おかし食べる?」
優子が隣に座り、袋を差し出す。
「はあ、どうも」
事務所で働き出して一週間だが、優子とは昔からの知り合いだったので、数少ない喋れる人である。
「しかし、姉さんも考えたもんだわ。社員旅行と修行を一緒にするなんて」
「行き先は知ってるの?」
「まあね。姉さんの先生の所よ」
「ひのめさんの?」
「そう。だいたいの除霊の方法は母さんに教えてもらったようだけど、あの火を使う方法は妖怪に教えてもらったらしいのよ」
「妖怪?」
「そう知らない?玉藻という狐妖怪よ」
「え?狐の妖怪?」
英夫の頭の中で狐の顔をした怖い妖怪が思い浮かんだ。
「じゃあ、ここが終着点よ。ここからは班別行動とします」
ひのめが叫ぶ。
「さあ、私の班員はこっちよ」
ひのめの後を英夫と美希と優子が続く。
「何か、物凄い嫌な予感がするメンバーなんだが」
深い森に入っていきながら英夫が呟いた。
「まあ、ついてくれば解るわ。あ、そろそろね」
森が開け、そこには一つの寺があった。
「さあ、ここよ」
と、カバンをあさり、中から稲荷寿司を出す。
「先生、ひのめです!!」
そうする寺の扉が開き、中から20代半ばの女性が出てきた。
「久しぶり」
そう短く言い稲荷寿司を食べだす。
「で、何の用?」
食べながら問う。
「実はこの子達の修行をしようと思ってね。面倒見てくれる?」
「ふーん」
と、三人を見比べる。
「あんた・・・」
と、英夫の前に立つ。
「へー、あんたがあの・・・。噂は聞いてるわ」
と、ジロジロと眺める。
「まあ、いいわ。丁度、最近新しい弟子が入ってね。あ、来た来た」
森の中から一人の女性がやってきた。腰まで届きそうな髪の毛に圧倒的に美しい顔。そして、完璧なプロポーションをしていた。
「初めまして。氷堂亜紀です、よろしくお願いします」
礼儀正しく頭を下げる。
「じゃあ、そういう事だから。仲良くしてあげて。ん?何をしてるんだ?」
英夫が亜紀に近づきジロジロと見る。
「どこかで、会ったことあったっけ?」
「は?」
「英夫君、ナンパなら他の時にしなさい」
ひのめがたしなめる。
「ふふふ、デートのお誘いならいつでも受けますわよ」
亜紀は頭を下げ、寺に入っていった。
「そうかな・・・ん?」
英夫は一瞬寒気に襲われたが、天候に変化はなかった。
「何だ?今の?新しい魔族か?」
『あなたもアホね』
ルシオラの声が聞こえた。後ろで美希がこれ以上ないというくらい冷たい視線を送っていた。
「では、勝手にやってもらってもいいんだけど、稲荷寿司ももらったことだしちゃんとやってあげるわ」
と、皆の顔を見る。
「そこのあなた達は」
と、美希と優子を指差す。
「ひのめ、見てあげて。あなたが昔やったのと同じのでいいわ」
「了解」
ひのめが引き受けたが、その目は怪しく光っていた。
「ふふふ、地獄を見るわよ」
「そんで、あなたとあなた。見たところまったく解らないから、こっちにおいで」
と、英夫と亜紀を寺の中に招き入れた。
「じゃあ、そこに座って。霊力を集中させるの。落ち着いてね」
と、二人を座らせ自分は後ろに立つ。
「へー、亜紀はなかなかね。いいGSになるわ」
『でも、変ね?この子の霊力』
「そんで、横島ジュニアは。へ?何してるの?」
まったく霊力が感じ取れない。
「ちょっと、やる気あるの」
「あります。でも解りません」
「なるほど。基礎から教えろというわけね」
と、笑顔で話す。
「厳しいわよ、私の修行は」
その後、英夫は延々としごかれた。
「おかしいわね?普通ならどんな霊力がない人でも何かしらの反応があるはずなのに」
「お、鬼・・・」
英夫が倒れながら呟いた。
「なるほど、あなたの【鍵】が『怒り』というのは本当のようね。横島が煩悩の働かない時は単なる役立たずだったのと同じね」
「え、それじゃあ?」
「ご心配なく。横島は今ではちゃんと使えるでしょう?用は慣れよ慣れ。じゃあ、明日はもうちょっとキツいの行ってみようか?」
時同じくして、また二人の人間が倒れていた。
「し、死ぬ・・・」
優子は搾り出すのがやっとだ。
「まったく、だらしないんだから」
「これは、私もまだまだという事ですかね」
美希はやっと搾り出した。
「悪いけど、今日はあんた達の世話はできないわ」
と、朝に玉藻が言った。
「今日はどうしても行かないといけない用事があってね。ひのめ、後は頼んだよ。それから・・・」
と、英夫に近づく。
「ジュニアは亜紀とお稽古よ。がんばって神通根の一つでも使いこなせるようになるんだよ。じゃあね」
玉藻は森に向かっていった。
「じゃあ、私達も行くわよ」
三人も違う方に向かっていった。
「え、えーっと」
「じゃあ、行きましょうか」
二人も歩き出した。
『しかし、こいつ絶対にどこかで・・・』
そんな英夫を後ろ目に亜紀は滝の方に向かった。
「さあ、始めましょうか?」
「おう」
相変わらず英夫の神通棍からは何の気配もない。
「ルシオラさん」
『だめよ、自分で何とかしなさい』
冷たく断られた。
「駄目ね。何を考えてるの?」
「え?」
「だから、神通棍を構えながら」
「剣よ、伸びろーって」
「それじゃあ、駄目」
と、近づく。
「いい。目の前の悪霊を倒したいと思うの」
「いないぞ」
「そう、あなたはおそらく目的対象となる敵がいないと霊力が出ないのよ。それはおそらく無意識のうちにストッパーをかけているのね。敵を倒すこと意外にこの力を使っては駄目だ、という」
「なるほど。敵か・・・」
目の前にGS試験の時に見たノアを思い浮かべる。しかし、何の反応もない。
「あれ、変だな」
次にカインを思い浮かべる。カインが向かってくるさまを。
「おおお!」
その時、剣が延びた。
「や、やった!」
「良かったわね」
と、その時、
「ひひひ!横島英夫だな?」
どこからか声がした。
「違いまーす」
と、返事をしたが、
「解ってるんだよ」
「じゃあ、聞くな」
すると、滝から一人の魔族が出てきた。
「ゲイル様に従いし十二魔の一人タウラー」
「な、何かヤバそうな展開」
「心配するな。俺たちはカインと違ってのんびりといたぶりながらお前のレベルアップを待ったりなんかしない。この場で楽に殺してやるぜ」
頭の角をこちらに向けて突進してくる。
「神通棍切り!」
角を正面から迎え撃つが、
ボキッ!
鈍い音がして神通根が折れた。
「ちょっと、待て!何で?」
「残念だったな。死ね!」
再び突進してくる。
「や、やられる?!」
『横に飛んで!』
ルシオラの声が響いた。
「おう!」
間一髪で交わした。
「まだまだ!」
再び突進してきた。
「炎!」
突然、火柱が上がりタウラーを弾き飛ばす。
「玉藻さん」
「ジュニア!」
と、大きな箱を投げつける。
「あんたの母親からよ」
横にヒャクメが立っていた。
「さっさと装備するのねー!」
「は、はい」
箱の中には篭手が二つとヘアバンド、そして剣が入っていた。
「えっと、こうしてこうして」
もたもたと着けている。
「よし!」
と、剣を構える。
「同じことだ!!」
タウラーがつっこんで来た。それを軽くかわす。
「なんか強くなった気がする。敵の動きがよく見える」
と、構えを取る。
「すると、この剣は・・・?」
剣に霊力がこもる。
「おお!なんか凄いぞ!」
「小竜姫が探してきた剣なのねー」
剣には圧倒的な力がこもっている。
「よし!」
タウラーに向かう。
「行くぞ!!」
一瞬だった。一瞬でタウラーが真っ二つに裂けた。
「何をしたの?」
玉藻がヒャクメに尋ねる。
「超加速よ。龍神の装備を着けたから可能なのね。しかし、あっさり使いこなすとはね。やはり並みのセンスじゃないのね」
「おお!なんか、凄いぞ!!」
英夫は自分の強さに酔いしれる。
「さすがね、玉藻。この二、三日であそこまで鍛え上げるなんて」
「昔、ひのめにやったのと同じね。あの子も炎を操る能力を使いこなせていなかったけど」
「なかなかいいわね」
ひのめが美希と優子を見下ろす。
「さ、さすがにしんどかったわね」
「まあ、今日で終了よ。明日はのんびりしましょう。その前に、お客さんね」
と、木の一本を見る。
「出てらっしゃい。魔族さん?」
「ほう、気づいていたのか」
一人の魔族が現れた。一見、優男である。
「へー、いい男じゃない。状況が状況ならお付き合い願いたいところね。で、何の様かしら?」
「それはどうも。私の名はアリエルだ。しかしお前には用はない。用があるのは」
と、美希の方を見る。
「そっちだ」
「それは、光栄ですね」
美希が構える。
「魔族をあっさり片付ける精霊石を使った攻撃。お前を生かしておけば少々厄介なのでな」
「では返り討ちにして上げましょう」
と、精霊石を取り出す。
「待って」
ひのめが制す。
「残念ながら、魔族の脅威になり得るのは美希ちゃんだけじゃないのよ。この美神ひのめ様を忘れてない」
「ふ、知らんな」
「なら、教えてあげる」
手から炎を出す。
「消えなさい!!」
炎がアリエルを包み込む。
「この程度か?」
「まさか」
手に神通棍を持ち、間を詰める。
「せい!」
一閃させる。
「遅い、遅い。ただの人間が何の策もなしに魔族に勝てると思ったか?」
「・・・・」
その後数発の炎をひのめは出した。
「それで?」
アリエルは簡単にかわしていく。しかし、突然ひのめの動きが止まる。
「どういうつもりだ?」
「あら?あなたさっき自分で言ったでしょう?何の策もなしに魔族に勝てるはずないって」
「?」
周りを見渡す。
「!まさか?」
「今ごろ気づいたの?」
アリエルの周りには炎で張られた結界が出来ていた。
「バイバイ」
手を握ると結界は収縮して爆発した。
「甘いわよ、魔族さん」
余裕の表情を見せた。
「皆、無事?」
玉藻がやって来た。
「どうやら、こっちも片付いたようね」
「余裕よ」
ひのめが答える。
「でも、いったい何でこんな所に?」
「それには、私が答えるのねー」
ヒャクメが現れた。
「今の敵は前回現れたカイン派の魔族ではないのねー。カイン派とはまったく別のグループ。つまり、英夫君の命を奪いに来た連中よ」
「そう、その割にはたいしたことなかったわね?」
ひのめが振り返る。
「ここの森には結界が張られているの。魔族は力を弱めるし、逆に私たちは強くなれる。この結界が無ければ危なかったわよ、ひのめ」
「そう、それで・・・」
「ゲイル様!」
「・・・・」
2人の美女が向かい合っていた。
「横島英夫と、その取り巻きたちの情報です」
ショートカットの女が声をかける。
「そう、悪くないわね」
ゲイルが答える。
「カインはどう?」
「まったく動きがありません」
「そう。では引き続き監視を。バルコ」
「は!」
バルトは姿を消した。
「カイン。貴方の思い通りにはさせないわよ。横島英夫には消えてもらう」
「皆、寝静まったな」
社の外に一人の魔族が立っている。
「おまけに、睡眠香も焚いたから、起きる事は無いだろう」
社の方に手を向ける。
「残念だが、死んでもらうぞ。横島!」
手から魔力が放出される。しかし、社の前で消失した。
「残念ながら、皆はここにはいないわ」
目の前にノアが現れた。
「十二魔ね?」
「そうよ。我はキャンサ。十二魔の一人よ。邪魔をするのか?」
「邪魔?そうね。そうなるわね」
キャンサが魔力を放出する。
「弱すぎるわよ。私は『バランサー』よ。貴方程度では、役不足」
魔力を握りつぶす。
「く!」
「さよなら」
音も無くキャンサは消滅した。
「あの人は、決して殺させはしない・・・・」
「カイン様ですね?」
カインの目の前に一人の魔族が現れた。
「・・・ゲイルの使いか?」
「はい。ピケスと申します」
礼儀正しく挨拶をする。
「何の用だ?」
「はい。伝言です。『横島英夫の命はもらう』と」
「なるほど」
「横島英夫抹殺の邪魔をするなら、あなた様も敵ということになりますね?」
「・・・そうなるな。私はあいつに強くなってもらわないと困る。長い人生のほんの一時だが、私の闘志を満たしてくれる」
「そうですか?でしたら」
と、飛び下がる。
「死んでいただきます」
しかし、
「ゲイルに聞いていなかったのか?私が読心術の使い手であることを?」
いつの間にか後ろを取られていた。
「な!」
「一定レベル以下の雑魚の考えているころなぞ、手に取るように解る」
「くそ!」
後ろを振り返るが、
「遅い」
剣が一閃した。
「そういう態度を示すなら、こっちにも考えがある」
カインは姿を消した。
「四人か。まだまだねー」
ヒャクメが千里眼を使っている。
「何か知らないけどそのうち二人は誰かが消してくれたみたいですね」
横に小竜姫が立つ。
「あと八人ですか?」
「ええ。そのうちの四人が厄介ね。ゲイルの親衛隊ともいわれている」
「やはり、早めに本拠地を叩くしかないのかしら?」
「そうね。でも、私たちはその場所に行く能力が無い」
「おーい、カオスさん」
英夫はカオスのアパートに来ていた。
「おお。ひさしぶりじゃのぅ」
カオスが迎える。
「確か、横島忠夫じゃったかな?」
「それは父さん。俺は英夫です」
「ああ、そうか。で、何の用じゃ?」
「さっき電話で話したでしょうが。魔界事を記した書物を持っていると聞いたのに」
「おお、そうじゃそうじゃ。どこにやったかの?」
「ここです。ドクターカオス」
マリアが本を渡す。
「そうじゃそうじゃ。ほれ、持っていけ」
「どうも、カオスさん」
「ああ、頑張れよ。わしももう少し若ければ手伝うんじゃがな」
「き、気持ちだけで十分です」
英夫が去った後、
「ん、お主誰じゃ?」
「ドクターカオス様ですね?」
「お主、魔族じゃな?」
カオスの目線が鋭くなる。
「ふふふ、そうです、私はカインと申します。今日は一つお願いがあって参りました」
懐から文殊を取り出す。
「何じゃ?」
文殊を手に取る。そこには【若】という文字が刻まれていた。
「お、おお!」
顔の皺がみるみる消え、若き日の顔に戻る。それに伴い圧倒的な覇気をかもし出す。
「・・・いったい何のつもりだ?」
「あとは、貴方次第というわけです。期待していますよ。かつては魔族すら震撼させた『ヨーロッパの魔王』の実力を」
カインは消えていった。
「・・・マリア、準備を急ぐぞ。魔界へ行くな」
少女は夢を見ていた。生まれつきの勘の良さを持ち母親以上の巫女としての素質がそうさせたのか、少女は夢を見ていた。
『………ちゃん。俺達は進むべき道が違うようだ』
『カイン!!お前だけは!!』
『ふん。所詮は人間か。あのアシュタロスを倒した男がいたと聞いて楽しみにしていたのにな』
『やはり、行くのですか?』
一人の少女が男を見守っている。
『ああ。カインの奴を倒せなかったのは俺だ。そのせいで、たくさんの血が流れた。起こらなくてもいい神魔戦争が再び起ころうとしている』
『そうですか』
『哀しい顔をしないでくれ。もう、会えないというわけじゃないんだ。でも、サヨナラだ』
『………!!』
少女が最後に男の名前を叫ぶ。しかし、男は後ろを向きゆっくりと歩き出す。そこに一人の女性がいた。
『さあ、行きましょう。小竜姫様』
『いいのですか?』
男は泣いていた。
『ええ。このままでは、また俺は』
男の目に火が灯る。
『あの子だけは守る。たとえそれが、あの子と別れる道であったとしても』
悲しい夢だった。少女の頬に一筋の涙が流れた。しかし、夢の内容は覚えていない。
「変なの」
少女はベッドから起き上がる。
「最近良く見る夢よね」
朝目覚めると内容はすっかりと忘れていた。しかし、一つだけ覚えている名前があった。
「横島さん?」
少女は夢の事が気になり、母にその事を話した。
「そう。そんな夢を」
一瞬、母は悲しそうな顔をした。しかし、次の瞬間に驚きの言葉を口にした。
「瑞穂、東京に行きなさい。もしかしたら、それは何かの導きかもしれないわ」
「東京へ?」
瑞穂は驚く
「『美神除霊事務所』。もしかしたら、そこにあなたの運命が待っているわ」
パッと見て分からなかったのは、カオスの最後の場面でのセリフです。
>「・・・マリア、準備を急ぐぞ。魔界へ行くな」
カオスさん魔界に行かないんですか?
もし誤爆ではないなら、何気に放棄してますね(笑)。
コメントが短かいかもしれませんが、失礼します。 (BJL)
もってまわった表現を多用すべきだとは言いませんが、もう少し`読ませる´作品にして頂けると読みやすかったりします。 (味噌茄子)
いくらなんでもそれはどうかと思う (物体X)