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after day

幕間「ただいま修行中」


投稿者名:ダイバダッタ
投稿日時:05/ 2/20

「横島先生。拙者に稽古をつけてくだされ」
 梅雨時だというのに晴天の続いたある日。唐突にシロは言った。
「はぁ?」
 出し抜けに言われて横島は戸惑った。
「んなの無理に決まってんじゃねーか」
 横島は生まれてこのかた稽古などした事もつけて貰った事も無い。武術はもちろん、それどころか霊的な事に関してもだ。
 妙神山のは稽古というよりは試練だ。出来れば大幅に強くなれるが、出来なければ死ぬという試練だ。
 アシュタロスの事件の折に地下施設で行ったのは修行と言えるのではないだろうか。と、言うもので、稽古ではない。
 唯一そうかも知れないと言えるのが、GS資格の二次審査を心眼の支持で戦い抜いた事だけだ。
 そんな横島がシロに稽古をつけるなど出来るはずも無い。
「でも、拙者。出会ってすぐの時に一度稽古をつけて貰って以来、全然してないでござるよ。
 先生も最近はヒマでござろう?」
 横島はそういう問題ではないと思った。
「そんなの全然師匠と弟子らしく無いでござるよ。
 もっとこう、ミヤジとカニエルさん見たいに――」
 ああ、コイツ。ベストガイ見やがったのか。横島は理解した。
 確かにあれ見たら修行したくなるよなー。
 俺も昔、よくやったもんだ。
 ワックスかける。ワックス拭く。
 ワックスかける。ワックス拭く。
 アップ、ダウンねカニエルさん。
 横島はガゼン燃えてきた。
「よし、いいだろうシロ。お前に稽古をつけてやる。行くぞ。修行だ!」
「ハイでござる!」

 とりあえず川原まで走った。
 横島はすでに疲労困憊気味でやる気の半分以上を失っていた。
 シロは元気に「修行でござる♪ 修行でござる♪」と嬉しそうだ。
「では先生、早速稽古をつけてくだされ」
 シロは右手に霊波刀を出す。
「早速ってお前。その格好でいいのか?」
 横島は話を引き伸ばして修行の始まりを遅らせる。
「何か変でござるか?」
 シロは自分の姿を確認する。いつものジーパンに袖と丈を短くしたシャツの組み合わせだ。
「何かマズイでござるか?」
「違う。人型のままでいいのか、と聞いてんだよ」
「はあ……?」
 シロはよく理解できない。
「あのなあ、お前は人狼だろ?」
「モチロンでござる」
「だったら、お前が一番力を発揮できるのはどんな時だ?」
「それはモチロン満月の晩に狼の姿で……」
 言っている途中で横島の言いたいことに気づいたシロが語尾をにごらせる。
「お前が精霊石を使って昼間も人間の姿をしているのは修行のタメだってのを忘れてたのか?」
 シロは完全に忘れていた。ずっと人の姿をしていた方が何かと便利なので気にしていなかった。
「お前狼の時なにが出来るようになった?
 人語は喋れるようになったか? 二本足で立って手に霊波刀出せるようになったか? 退魔の遠吠えは?」
「どれも出来ないでござる……」
 シロはうなだれる。
「お前は昼間精霊石を外すと狼の姿になるんだから人語くらいは喋れるようになっておけよ。それが出来ないといざって時に困る」
「ハイ……」
 この手の機転において横島は天才である。
 まだ何一つ稽古をつけていないのにシロの横島を見る眼はすでに尊敬する師匠を見るモノになっている。
「それで、今日はどうするんだ?」
「今日のところはこのままでお願いするでござる」
「狼の姿だと話せないからやりにくいしな」
「うう……早急に何とかするでござる……」

「さて、稽古をつける前に戦いの基本について教えておこう」
「戦いの基本、でござるか?」
「そうだ、戦いの基本。その極意は避けることだ!」
 そう言って横島は地面にガバッと四つん這いになった。そのまま人外の動きで地面をゴキブリのようにもの凄い速さでジグザグに移動する。
「そして――」
 四つん這いの低い姿勢のまま前方に跳躍する。
「スキを見て攻撃する!」
 目の前の空間を霊波刀で切り払った。
 立ち上がる。
「これが戦いの基本だ」
 シロはポカンと口を開けて横島を見ている。
 声をかけられると横島を半眼で見た。
「なんか違うような気がするでござる」
 口をとがらせて文句を言う。
「あのなー。霊的戦闘ではカスリ傷でも致命傷になる場合が多いんだぞ。それに、防御が意味ねー場合もある。お前、俺が一体何とどれだけ戦ってきたか知ってるのか」
 横島はあえて、何とどれだけどんな風に戦ってきたのかは言わないでおいた。
「でも、紙一重の見切りやしっかりと防御すれば大丈夫でござろう?」
 シロは納得しない。
「そんなの無理だっちゅーの。チョッと構えてみろ」
 シロは言われた通り右手に霊波刀を出して構える。
「行くぞ」
 横島は言って同じく右手に霊波刀を出して無造作にシロに切りかかる。
 人狼にとってそれはあまりにも遅い動きだ。完璧に見えている。
 シロは霊波刀を霊波刀で防ごうとする。
 霊気の刃がぶつかり合う。
 瞬間――
 光が爆発した。シロの視界は強烈な光で真っ白になる。
「ほい、これで終わりだ」
 横島の声が聞こえた。
 視界が戻る。
 そこにはシロの咽元に霊波刀を突きつけた横島がいた。
「一体なにを……?」
 シロが尋ねる。
「霊波刀がぶつかり合う寸前に左手のハンズオブグローリーを右手の霊波刀に叩きつけたんだよ。サイキック猫だましの応用版だ」
 横島は霊波刀を解除した。
「ひ、卑怯でござる!」
 シロが叫ぶ。
 横島は冷めた目でシロを見る。
「お前なー。それ、本気で言ってんのか?」
「だって……」
 シロは口篭もる。
 横島はしばし考え込む。
「よし、いっぺん勝負してみるか。正々堂々、正面からの勝負ってやつを」
 横島はシロから距離を取る。
「勝負でござるか? 正々堂々の?」
「そうだ。さっきみたいな変則技は使わない」
 横島は右手に霊波刀を出す。
「それじゃあ、かかって来い」

 シロは横島に向かって走り出す。
 横島の間合いに入る寸前、右前方に跳躍。横島の左側面から切りかかる。
 横島はそれを左手にサイキックソーサーを出して防ぐ。
 シロは一旦後ろに飛びのいてからまたも右前方に跳躍。
 横島は前方に身を投げ出して反転、振り返る。シロが迫ってきている。右手の霊波刀を突き出す。
「伸びろ!」
 霊波刀がシロに向かって伸びていく。シロに突き刺さる。
 瞬間――
 シロは最小限の動きでギリギリ霊波刀を避けて横島への突進を続ける。右手の霊波刀を振り上げる。
 横島は伸びきった霊波刀を突き出したまま動けない。シロの霊波刀を見る。
(ああ、クソッ! やっぱりこうなるやんけー! 死んだら恨むぞ!)
 シロは自分の攻撃に反応しない横島に一瞬躊躇する。迷いのままに威力の落ちた霊波刀を振り切る。横島が吹っ飛んだ。

 横島は吹っ飛ばされて地面を転がる。土手にぶつかり派手な音を立てて止まる。土煙があがった。
「先生! 大丈夫でござるかっ!?」
 シロが慌てて駆け寄る。
「あー死ぬかと思った」
 ボロボロの横島が体を起こす。
「イテー!! 体中が死ぬほど痛いぞ!」
 体のあちこちを抑えてのた打ち回る。
「い、今ヒーリングをするでござる」
「だー、待て待て」
 横島は文珠を出して「浄」の文字を込めて発動させる。
「よし、頼む」
 シロが横島を舐めてヒーリングをする。
「先生。最後の攻撃は何で避けなかったのでござるか?」
 シロが横島をヒーリングしながら尋ねる。
「あのなー。お前、俺をなんやと思ってるんだ。人間の俺が人狼のスピードについていけるわけがなかろーが」
 シロは横島の顔を見て押し黙る。
 横島はシロに傷の一つを指差してみせる。シロは慌ててそこを舐める。
「いいか。人間の世界にはボクシングってスポーツがある。正面からの殴り合いだ。
 コイツには厳密な重量による階級制限がある。
 何故だか分かるか?
 正々堂々、正面からの戦いってやつでは身体能力の差が圧倒的だ。力があってガタイのデカイやつが勝つ。単純明快だな。
 ヘビー級の奴がフェザー級の奴にボクシングで勝負しろっつったら、そいつは卑怯者だろう。
 つまり、人狼のお前が相手に正面からの戦いを要求するのはそれこそが卑怯だって事だ。分かるか?」
「でも……」
 シロは弱弱しく口答えする。
 横島はそんなシロを困ったように見る。
「いーか、俺はお前に卑怯なことや変則技を使えって言ってるんじゃない。ただ、相手がそれをしてきた時、それは本当に卑怯なのかよく考えろって言ってるんだ。
 一見どんなにルールの無い戦いに見えてもルールは常に存在する。暗黙の了解ってやつがな。それを常に意識しろ」
「よく分かんないでござる……」
 横島はシロを見つめて少し考える。
「それじゃあシロ。宮本武蔵の事はどう思う?」
 別の点から教えることにした。
「偉大な剣客でござる」
 シロは少し食いついてきた、興味がありそうに横島を見る。
「俺に言わせれば奴は稀代の卑怯者でただの阿呆だ」
 シロはギョッと目を開いて横島を見る。
「奴はスンゲー卑怯なことをたくさんしたが、それについてどう思う?」
「そ、それは命のやり取りという真剣勝負の場においては油断する方が……」
 シロは自分で自分の矛盾に気がついていながらとりあえずそう発言した。
「シロ、それはな。お前が宮本武蔵に感情移入しているからそう思うんだ。相手の立場になってみればこれ程ふざけた奴もいねー。今から俺が話してやる」
 横島はそう言って語り始めた。

   ◆ ◆ ◆

 巌流佐々木小次郎は天才剣士である。その剣術は単純極まる。
 生まれ持っての腕力で日本一長い物干し竿と云う名の刀で相手より遠い間合いから斬りかかり、相手が反応できなければそのまま斬り伏せる。もし、反応して何らかの行動を取ろうとしたら、それよりも早く切り返して、斬り伏せる。
 それって剣術なのかと言われそうだが、刀を振っているのだから剣術だ。しかし、誰にも真似できない。まさに天才である。
 そんな小次郎が果し合いをすることになった。
 相手は稀代の卑怯者と名高い宮本武蔵である。
 卑怯者が相手とあっても逃げれば臆病者。理不尽ではあるが事此処に至っては戦うよりは他に無い。
 戦う場所は海の上の小島に指定する。立会人や弟子を配置して何も仕掛けが無いか厳重に見張らせる。実は先に着いて居て島に上陸すと同時に襲い掛かってくる事にも警戒する。
 無論のこと刻限に遅れてくることも考慮して椅子や茶を用意する。
 正に万全の体制で勝負に臨む。

 果し合い当日。
 案の定武蔵は遅れている。ていうかぶっちゃけ二時間の遅刻はありえないだろ。
 小次郎は弟子たちと「やーっぱり武蔵の奴遅れて来やがんの。その手には乗らねーっつーの。だはははは」等と談笑して見せてはいるが、その足は貧乏揺すりを刻んでいた。

 やっとのことで武蔵が訪れた。
 小船を果し合いの場に横付けして降りる。
「遅いぞ武蔵ー!」
 小次郎が怒って叫ぶ。
 武蔵はそれに答えず「さあ、始めようか」等と格好をつけた。
 え? なにそれ? まずは遅れて来た事を謝れよ! それが人として最低限の礼節ってもんだろーが! ていうかお前「武器はどうしたー!?」
 武蔵は刀の形に削った長い棒を見せる。物干し竿より長い。
「これでいい。さっき船の上で作った」
 はあ? なにそれ? これ神聖な果し合いの場よ。刀も持たずにそんな棒っ切れ見せてさっき作った。ありえねー。
「もういいっ! 始めるぞ!」
 小次郎は怒りに任せて鞘を抜き捨てる。
「小次郎敗れたりー!」
 武蔵が突然叫ぶ。
 小次郎は訳も分からず武蔵を見る。
「はあ?」
「小次郎。勝って帰るなら何故鞘を捨てる。勝った後に必要な鞘を投げ捨てるとは、小次郎既に敗れている!」
 何言ってんのコイツ? 俺の武器が何か知ってて言ってんのか? コレ物干し竿よ。日本一長い刀よ。
 鞘を地面に捨て置かないと抜けねーんだよ!!! お前分かってて言ってんだろ!!!
 ああ、斬る。
 俺はコイツを斬る。
 頼むから、俺に、コイツを、斬らせてくれ!
 小次郎は激昂し、怒りに任せて間合いの外から武蔵に斬りかかった。しかし、相手の武器は物干し竿より長い木刀。小次郎の刀は空を斬った。
 武蔵の長い木刀が小次郎の頭を打ち据える。小次郎は地面に倒れて臥した。
 ああ、糞。しくじった。遣られちゃったよ、マイッタネ。
 頭に一撃を食らったとはいえ、武蔵の獲物は異常に軽くて長い木刀。小次郎は戦闘不能になったとはいえ命に別状は無い。投げやりな瞳で武蔵を見上げる。
 武蔵が木刀を振り上げる。
 え? ちょっとまてよオイッ! 冗談だろ? 真剣勝負つったって勝負あったら普通命までは取らんだろーが!? 何冷めた目で雄たけび上げてんだよ! お前、絶対戦いに酔ったりしてねーだろ!? 止めろっ! よせ――
 武蔵は倒れ臥した小次郎の頭を打ち砕いた。
 すぐさま泊め置いていた小船に飛び乗り引き潮に合わせて一気に海へ漕ぎ出す。
 事此処に至って余りと言えば余りの事に呆気に取られていた立会人と小次郎の弟子たちは慌てて武蔵を追うも、相手は既に海の上。
 直ぐに船を出したが既に武蔵の姿は見えなくなっていた。
 対岸の船場を中心に捜索の手を伸ばしてみたが、結局武蔵は見つからなかった。
 実は武蔵、彼らの裏を書いて最も近い船場ではなく、島の反対側に回ってそこから一番近い船場に逃亡していたのだ。
 かくして巌流佐々木小次郎は武蔵に敗れ。
 卑怯者が相手とは云え負ければそれまで。その名声は地に落ち。その剣を受け継ぐものも無く、ここに流派巌流は終焉を迎え、弟子たちは路頭に迷った。

   ◆ ◆ ◆

「どうだ?」
 横島は語り終えた。シロは言葉も無い。
「武蔵は小次郎に勝つためには物干し竿より長い間合いの武器で攻撃するよりは無いと判断したんだな。だが、そのために用意した中身がスカスカになった古いカイを削って作った木刀では簡単に防がれて木刀が壊れちまう事にも気づいていた。
 そこで、小次郎の初撃をスカらせる為に小次郎を散々馬鹿にして怒らせたって訳だ。
 さらに付け加えるなら勝負があった後に雄たけびを上げながら止めを差すのは武蔵の常とう手段だ。奴は武器にこだわりが無い上に簡単に刀を投げ捨てるからな。木刀で果し合いをすることはしょっちゅうあるんだ。
 それで、勝負あった後にも生きてる奴が結構いるけど、もう一度戦ったら絶対に勝てないし復讐されるから殺しとくんだ」
 横島はニヤリと笑う。
「どうだ。宮本武蔵は稀代の卑怯者でただの阿呆だろ?」
「……確かに。武蔵どのが卑怯者であったのは分かったでござる。でも、アホではなかったのではござらんか? 卑怯とはいえ見事に敵に打ち勝っているでござる」
 シロは宮本武蔵が少なくとも卑怯者であったことは認めた。
「あのなあシロ。武蔵の目的は何だったか分かるか?」
「目的……武士として真剣勝負におもむき、それに勝つことでござる」
「昔においてさえ真剣勝負そのものが目的だったことはほとんど無い。なんせ命がかかっているんだからな。真剣勝負は手段であり目的じゃない」
 シロは考え込む。
「それでは……」
「武蔵の目的。それは仕官する事だ。そして、自分の名を天下に知らしめる事」
 横島は断言した。
「そ、それは……」
 シロは少し嫌そうな顔をした。
「別に悪いことじゃないだろ。定職に着いて有名になる。結構な事じゃねーか。
 だがな、武蔵はこの目的を果たせてねーんだ。
 結局、一生仕官できず。広まったのは卑怯者の名だ。
 仕官するために真剣勝負をして、勝てないからって卑怯なことをして卑怯者のそしりを受ける。居た堪れなくなって山に篭って農作業をして自給自足で生きようとして、挫折して山を降りて卑怯な真剣勝負をしてまた山に篭る。
 やっとこさ小笠原忠真の元に客人として居候させて貰えるようになったのは武蔵二人説が有力になるほど別人となった五十歳の頃だ。
 この五十の武蔵の精神性が高いもんだから、さかのぼって若い頃の武蔵まで美化しちまうんだ」
 横島はシロの目を見る。
「シロ、お前の目的は何だ?」
「拙者の目的……」
 シロは答えられない。
「真剣勝負をして勝つことか? 違うだろ。犬飼ポチがフェンリルになって暴れた時、お前俺になんて言った。仇を討つんじゃなくて、仲間を守りたいってそう言っただろ」
 シロは思い出した。確かに、そう言ったのは自分だ。うなずく。
「だったらシロ。お前は卑怯なことはするな。
 人は卑怯者を相手にする時、より卑怯になれる。
 卑怯な手で親や師匠を殺されれば一族郎党、弟子一同で復讐に走る。そんな卑怯者と一対一で戦えるかってな。いや、俺もぶっちゃけそう思う。
 もし、お前が卑怯なことをしたら人間は思うだろう。人狼は危険な妖怪だ。許しては置けん。生かしては置けん。てな。
 そうなったらお前の仲間は人間に狩り立てられるだろう。
 だからシロ。お前は卑怯なことをするな。例え相手が人間でない時でも、自分より強大な敵が相手だとしても。正々堂々、正面から戦え。まあ、戦う必要が本当にあるのかまず考えないと駄目だけどな。
 だけど、それをするためには――」
「卑怯なこととは何なのか。その場のルール――暗黙の了解を。何より、目の前の相手は本当に敵なのか考える事。で、ござるな」
 横島は「合格だ」とシロの頭を撫でた。
「今回の修行はここまでだ。飯、食いに行くぞ。今日は外食にするか?」
「肉肉ー。肉がいいでござる♪」
 シロが両手を上げて喜ぶ。
 横島は「分かった分かった」と答える。

 実のところ横島は安堵していた。
 戦闘では完全にボロ負けしたが、その後のフォローはまずまずと言っていいだろう。
 横島は昨日たまたま読んだ「宮本武蔵完全読本」に感謝した。
 横島忠夫。この手の事に関しては稀代の天才であった。


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