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BACK TO THE PAST!

小悪魔を追いかけろ


投稿者名:核砂糖
投稿日時:04/ 8/12

火に焼かれ、切り刻まれ、挙句の果てにはボコボコにシバキ倒されながらも、今回ばかりは自業自得のような気が・・・・しなくもない横島。

「・・・でもちょっとキツイ・・・ってか死ぬ。寒い・・・」

シャツ一枚の彼は、またもや山に捨てられていた。

ちなみになぜシャツ一枚かというと霧崎さんに貸しちゃったからである。





ずりっ、ずりっ・・・ガサガサ・・・

夜も遅く、人骨温泉ホテル付近の茂みがざわめき、中から男の顔が覗く。
「や、やっと帰れた・・・」
横島は這いずりながらも傷ついた体でやっとこさ帰ってきたのだ。

「うう・・・夜風が骨に染みるぜ・・・」
しかしそう呟いたのを最後にホテルの目の前で力尽きた。

だが、そんな悲惨な状況のよこしまに手を差し伸べる者がいた。

「だいじょうぶっすかー?横島サン」
「やだ・・・女じゃないとヤダ・・・」
「贅沢言わないでくださいよ〜」
山の神ワンダーホーゲル、略してワンゲルだ。

ワンゲルは横島を助け起こした。
「ん、・・・ありがとよ」
一応は横島も礼を言う。
「どういたしまして。それにしても無茶してくれたっすね〜」
横島が目をやるとパピリオが粉砕したであろう木々が10メートルほど続いていた。
「すまんな・・・」
「いや、その事はもういいっす。それよりパピリオのお嬢ちゃんが帰って来ないんすよ」
「え?」
横島は一瞬心配したが、よくよく考えれば彼女は上級魔族。しかも六道学園で(真面目ではないが)教育を受けたエリート。そこまで危ない事などめったに無い。
それにルシオラとの事をあそこまで捻じ曲げて周りに広めてくれた事がしゃくに障るので、一時の心配は無視する事にした。
「・・・パピなら大丈夫さ。そのうち戻ってくるよ」
ワンゲルはそうっすか、と呟いて横島に肩を貸して引きずっていったが、やがて思い出したようにこう言った。
「ああ、そういえば自分の山には最近強い妖怪が二匹ほど住み着いているっす。彼らに鉢合わせたらちょっと心配・・「パァァアアアピィィリィィオォォォオオオオオオ〜〜〜〜〜!!!!」どうぁ!!」

横島は一瞬でワンゲルの腕を振り解くと奇声を上げつつ夜闇に飛び込んでいった。

「待ってろ〜〜!!兄ちゃんが今助けるぞぉぉ〜〜!!」

遠くでそんな大声がバキバキという自然破壊の音と共に聞こえる。

ワンゲルはしばし唖然としていたが、
「美しき兄妹愛っすね・・・!!」
山のように清んだ心で感涙していた。



―――でも心配なのは妖怪の方と、この山なんすよ・・・
そしてさっきとは違う涙を流した。





「ああ!もう!むしゃくしゃするわねっ!!」

ばきっ!

一方パピリオは、暗い山の中道無き道を、大またでのしのしと歩きながら八つ当たりで自然破壊をしていた。




そりゃあやっぱり受け入れてくれないとは思ってた。

ちょっと、甘えてみたかっただけ。


そう、あの人が私を見る目はあくまで大切な妹・・・


まだ幼い妹・・・


それにまず、あの人の中に私の姉がいるかぎり、あの人は誰にも深くは関わろうとはしないだろう・・・


そもそも私という存在自体、姉を連想させるものだ。

だからあの人は一生懸命私を幸せにしようとするだろう・・・


あくまで、


妹として。




でも・・・

「だからって・・・・っ!ガキ扱いすんなぁぁぁああ!!」

メコッグシャァァ!!

怒声と共に一発で樹齢八十年はあろうという大木が吹き飛ぶ。
自然保護団体の人が見たら気絶するだろう。

パピリオはしばし上がった息を整えていたが、やがて

「・・・馬鹿」

月と星明りのみが光源の、暗い森の中で、一人毒づいた。

やがて頭も冷えてくるにしたがい、冷静に考えれば今自分がここにいるのは好ましくない事にも気が付いた。

ふと辺りを見渡せば黒い木々に黒洞々足る闇。
怪しく広がる草花に、訳もわからぬ気味の悪い虫の鳴く声が響いてくる。

「迷っちゃった・・・」

直ちに飛び立ってホテルへ戻ろうとするパピリオ、しかしそんな彼女の第六感が何かを捕らえた。

ざん!

「きゃぁ!」

そして突然草木の間から突き出てきた槍状の物をギリギリでかわした。
さらに続けざまに打ち込まれた矢を叩き落し、風を唸らせる勢いで向かってきた岩を避ける。


トラップだった。それもかなり手馴れたの者が作った物だ。

「な、なんなのよ・・・誰なの!?姿を見せなさいよ!!」

パピリオはいらただし気に叫んだ。
するとざわざわと風の騒ぐ音に混じって子供じみた声が流れてきた。

『わはははは!オイラはこの山の守人!!山を荒らす者を追い払うのがオイラの役目さ。アンタは山を荒らしすぎた。ここでオイラにやっつけられてもらうぞ!』

わ〜〜〜っはっはっは!という笑い声に、パピリオのただでさえ切れやすい上に、先ほどの騒動でさらに切れやすくなっている理性が軽くブチ切れた。

「ああ、そうかい!」

そして声が聞こえた方向に向かって巨大霊波砲を打ち込む。

木々が吹き飛び、小さな空き地が出来上がる。
もしここに生物がいたとしたらひとたまりもないだろう。

しかし、

『わはははははは!!馬鹿だ〜!そんなトコにいるわけ無いよー!!』

そこにはやや変形したトランシーバーのような物がまたもや人の神経を逆なでするような事をまくし立てているだけだった。



「・・・・・・・ぶっ殺す!」

パピリオはトランシーバーを踏みつぶした。



とっとと帰れば苦労しなくて清むのに・・・

彼女は結構マジで切れた。だからこれらがどっかで見た事がある攻撃法である事に気づけなかった。





そのころのホテルロビー。

「・・・もし、・・・もし!お嬢さん!」

「・・・・・・はぃ?」
自分達以外に誰一人といないロビーのソファーの上で気絶していた霧崎さんは、誰かが体をゆするのに目を覚ました。
「こんなところで眠られてはお体に障りますよ?」
目を開ければ何やらやけに和服の似合う美人の女性が顔を覗き込んでいた。
おそらくここの女中か何かだろう。
「私・・・いったい・・・・イタッ!」
霧崎さんは自分の身に何が起こったかわからないような顔をした後、後頭部の鋭い痛みに顔をゆがめた。
「大丈夫ですか?」
ベッピンの女中さんは心配そうな顔をする。
「いえ・・・でもいったい何が・・・」
ウンウンと考える彼女はここで初めて横島のGジャンに気が付いた。

あ、掛けておいてくれたんだ・・・優しいな・・・。

・・・彼女はどうやら人を疑う事を知らないようだ。
真相は永遠に迷宮入りであろう。

霧崎さんがまあどうでもいいや、と考えるのを止めた(深く考えない性格でもある)その時、

「あら、何してるの?」
通路の向こうから美神が現れた。
こう見えても美神は若手超有名世界最強S級GS。そして六道学園の全生徒の憧れの的である。
もちろん霧崎さんは思いっきり狼狽した。
「え、あ、はっはいぃ!す、すいません!!なんかよくわかんないんですけど、きゅっとなって、それで・・・・えぇ?なんだっけ・・・」
ひぅっ・・・・と言葉につまり、終いには泣きそうになる彼女。
「い、いや別に怒っては無いわよ。ま、さっさと部屋に戻りなさい。私も一応は見回り係だけど今回は見逃してあげるから。でももたもたしてて鬼道あたりに見つかったら怖いわよ」
美神はそう言うと向こうへ去っていった。
霧崎さんはほっと一息をついて部屋に向かおうとするが・・・


「あの・・・何、してるんですか?」
女中さんがソファーの後ろでカタカタ震えていた。
そして恐る恐るあたりを警戒しながら這い出してくると、震えた声でこう聞いた。
「い、今の女・・・・もしかして美神・・・令子・・ですか?」
「はい」

フラッ・・・

「じょ、女中さん!?」
霧崎さんは突然倒れた女中さんの頬をピシャピシャ叩いて目を覚まさした。
「はっ!・・・すいません、つい・・・」
目を覚ました女中さんはソファーに座ってうつむいた。
「(つい気絶するの・・・?)どうしたんです?前に美神さんと何かあったんですか?」
「はい、実は・・・・・


以前あの女に殺されかけたのです」

「えぇ!?」
霧崎さんは物騒な言葉にビクリと飛び上がった。

「しかも親子共々!!」
女中さんは霧崎さんににじり寄りつつ、腹に力を込めて叫ぶ。
「ひっ!」
霧崎さんはあとずさった。


「というわけで私はともかく息子が心配です!私にも多少の霊能はあります。見たところ彼方も腕の立つお方!二人がかりながらあの美神令子からも逃げるくらいならできるはず!どうか私達を助けてください!!」
「え、え〜〜!?」
さらににじり寄る切羽詰った顔をした女中さん。
さらにあとずさるこっちも切羽詰った顔をした霧崎さん。

「どうか!!」
にじり!!

「あう・・」
あとずさり・・・

「私達親子を!!」
にじり!!

「ひぇ・・」
あとずさり・・・

「お助けください!!」
にじり!!

「ひ〜・・・ってああっ!!」

霧崎さんはいつのまにか隅に追い込まれていた。
逃げ場は無い。
ただあるのは女中さんのすがるような目線のみ。



霧崎さんに拒否権は無かった・・・。


というかまた殺されかけるという保証もないのだが・・・



そして、ちょうどその時、ホテル玄関にてうごめく影があった。
それはフンフンと鼻を鳴らしつつ地面に這いつくばっているという異様な影であった。

影はしばらく薄暗い水銀灯の下、玄関付近をうろうろしていたが、目的のにおいの筋を見つけ走り出す。

が、

ゴチン!
「あだっ!」「いたっ!」
何者かに正面衝突した。

「た、タマモ?」
「シロ?」
それらは片や砂まみれのシロ(短パンにタンクトップ。健康美)に、体中に葉っぱをくっ付けたタマモ(ユカタ。せくしー)であった。
二人はパッと距離をとり、相手を警戒して身構える。
「こんなところで何をしているでござるか」
「アンタこそ何してんのよ」
「拙者は人探しでござる」
「あら奇遇ね。私もよ」
「お互い邪魔は無用でござる」
「そうね、もう行くわ」
二人は、一度は反対の方向へと歩み去っていたが、結局は同じ方向に進みつづける。
「ちょっと、真似しないでくれる?」
「それはこっちのセリフでござる」
瞬く間に険悪になるムード。
「ヨコシマならこっちにいないわよ。とっとと失せなさい」
タマモはしっしと手を振ってシロを追いやろうとした。
「探しているのは先生じゃないでござる!」
むっと胸を張って答えるシロ。
「じゃあ誰を探してるのよ」
「パピリオ殿でござる」
シロの言葉にタマモが僅かに動揺する。
「え、あんたも?」
「タマモもでござるか?」
「うん。ちょっとさっきのセリフについて意見を聞きたくてね」
二人の脳裏に先ほどの爆弾発現が蘇る。


『ゼロ歳児とヤろうとしていたくせに〜〜〜!!!』


・・・・なんだか思い出しただけで怒りが込み上げてくる二人。
「じゃあ拙者と目的は同じでござるな・・・」
シロはいらつきで頬を引きつらせながらも、話題を元に戻した。
「その様ね・・・」
拳を固めるタマモも頷く。
そして、





「おっ先!!」
「あ、待てクソ狐!!」
当然の事ながら競争になるのだった。

シロの猛追を背中に感じながらタマモは冷静に状況を分析する。

パピリオの性格からするとこっちの方向にまっすぐ逃げたはず・・・つまり男湯を直進!

タマモは黒っぽい茂みの中に飛び込んだ。
「待て!」
シロもワンテンポ遅れて飛び込む。








いや、別に男湯に人知を超えたマッチョなおやぢが、にこやかなスマイルと共にセクシーポーズ取っていたなんていうオチではない。



ただ、業務員のおっさんが温泉の中に入浴剤を入れていただけである・・・・。

タマモは固まっていた。シロも固まっていた。おっさんももちろん固まっていた。


この空間で動いているのはドボドボと注ぎ込まれる入浴剤だけとなった。



「お、温泉の成分が薄くなってきて、それで、つい、というかなんというか・・・」
おっさんが訳のわからない弁解をする。



「お先・・・」
「あ、待て!」
やがて覚醒したタマモは見なかった事にして走り出す。シロもそれに習った。



そしておっさんが残された。









横島、パピリオ、霧崎さん、シロタマ。

入り乱れたストーリーが展開・・・・・されそうな予感。




「なんか不当な扱いを受けているような気がするわ・・・」
そのころ美神はブチブチと愚痴りながら懐中電灯片手に見回りを続けていた。(ちなみに時給2500円のバイトね)


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