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BACK TO THE PAST!

超!修学旅行。除霊実習の巻


投稿者名:核砂糖
投稿日時:04/ 7/ 7

「酒やぁぁ・・・酒もってこ〜〜〜い・・・」

一本古来から伝わる宴会用の細長いテーブルに、横島がへべれけになって突っ伏していた。

一般生徒たちの食事はもう終わり、残っているのは残飯、皿、そして一人の酔っ払いのみ。となったのだった。

「ちくしょ〜。こんなオチがあろうたぁ思ってたよ、くそったれ〜」
可哀想な彼は出会い頭に向けられる女子生徒の軽蔑の目線に耐え切れず、一人自棄酒に勤めていたのだ。(自業自得か)

「ちょっと・・・あんた、酒飲んでいいの?」

「あい?」
いつの間にか、横島が愚痴っているすぐ横に、心なしか心配してくれているように見える浴衣すがたの美神がいた。
「あ〜だいじょうぶっすよー。第二話の『シリアスでゴー』のときの描写から推測すればこの物語は原作終了後約三年後。原作では十七歳だったから、よって俺ももう二十歳っす・・ヒック」
「やけに冷静ね・・・」
彼女はあきれたようにそう言った。そしてあたしも貰うわ、と続け、横島の隣に座る。

横島はそれをぼぉっと眺めていた。
あ〜やっぱこのオンナは何着てても色っぺーな〜。
この浴衣のゆったりとしたところから覗く肌色が・・・たまらん!

ん・・・ユカタ?ゆかた・・・・浴衣!!

「しまったぁぁっっあああ!!もう入浴が終わったのか!!!
横島忠夫、一生の不か・・「馬鹿たれ!もう少年Aじゃすまないのよ!!」

がきん!
いてぇ!!

美神の振り下ろした酒瓶が横島の頭を直撃した。
横島は頭をさすりながら美神を睨む。
「いやだな〜冗談っすよ」
「ほんとかぁ〜?あんたのことだから、これから女子校生でも覗きに行くんじゃないの?」
「ひどいっすね・・・俺、そんなに飢えちゃいませんよ。犯罪じゃないっすか」
美神の、「何をいまさら・・・」という目線が突き刺さる。
その後二人はちびちびと酒を飲み出す。
やがてふと横島が口を開いた。
「・・・そういえば何しに来たんですか?」
「あんたのお付け目役よ。こん中じゃあ、あんたを殺せるのは私だけだからね」
「殺すって・・・」
「いくらあんたでも犯罪に手を染めたらあたしが死刑にしてあげるわよ?」
「(何をいまさら)・・・解りました解りました、しませんよ・・・ウィッ」
横島はやけくそのようにビールの入ったコップをぐいっと傾ける。
「・・・そういえば今年は何を祓うんすか?除霊実習」
「この山に住み着いてる雑魚霊の詰め合わせだってさ。ワンダーホーゲルがしばらくの間わざと溜めといてくれたんだと」
「ワンダーホーゲル・・・まだ居たんだ」
「山の神が消えるかい」

アルコール摂取のスピードは次第に加速され、またしばらく無言が続く。

酒瓶の山ができたころ、最初に口を開いたのは美神だったが・・・
「横島?」
「・・・」
「うぉーい。よこしま〜」
「ぐぉ〜〜〜・・・・」
「寝てんのかよ・・・」
横島は肴のカニかまを咥えたまま眠りこけていた。
おーきーろーよーコノヤロ〜と眠る横島に絡む彼女は迷惑な酔っ払い以外の何者でもない。
唐突に手が止まる。

「横島・・・」

『素直になりなさい』母の言葉がアルコールと一緒にぐるぐると回る。

―――まっ、ちょっとぐらいはいい、かな・・・?

そして、彼女は自分と横島以外に誰もいないことに気づく。


これってチャンス?


「えへへ〜」

酔いで意識も朦朧としているせいか、なかなか大胆な行動を思いついた彼女。
「よこしまぁ〜」
べたぁーとくっ付いたりぎゅっと抱きしめてみたり、アルコールの力を借りて、とにかく普段出来ないことを片っ端からやってみた。
何かするたびに何処から暖かくてほわっとした物に体中満たされるような気分になれる。
と同時にそれを失う恐怖も湧いてきた。

ねぇ横島。キミ、居なくならないよね・・・。
ママや西条さんみたいに、居なくならないよね・・・ってまあ二人にはまた会えたけど・・・。

一緒にいるのがあたりまえの関係・・・それゆえ失った時の喪失感は大きい。

―――もう一緒にいるのが普通なんだから、アンタがいないと私は・・・。

その時、彼女の目線はただ一点に固定されてしまった。
そう、横島の唇である。
「・・・ごくり」
心臓が早鐘のように打つのが自分でもわかる。
顔中がカッカと熱く、そして真っ赤になっていくのも解る。
気づけば、手のひらも汗びっしょりだった。
自分ともあろう者がこんなことするのはおかしいとは頭の中では解っているが、このチャンスを逃せばもう後は無いような気もする。

そこで彼女は、彼の顔を両手で挟み

少しばかりこちらに向け

徐々に自分の顔を近づけていった。

あと十センチ。



あと五センチ。





あと三センチ・・・
「る・・・・るし・・・・るし・・?」






彼の口からこぼれたコトバ。


決して消えないキズ。そして彼の中で永遠となったカノジョ。


美神は一瞬で自分の体中が冷めていくのを感じた。


あたし、何やってんだろ・・・

すぐさま手を離し、すっと立ち上がる。そしてきびすを返してその場を去った。



後ろ手に、入り口のふすまを閉じようとした時、またもや横島の寝言が耳に入る


「る・・・るし、るしゃとりえのほうそく・・・・」

ズガン!!美神は思いっきりずっこけた。

ルシャトリエの法則:物質は平衡が圧力・温度などを変えることで乱れた時に生じる影響をなるべく小さくする方向へ平衡を移動させる。という法則。別名平衡移動の法則。

「ええい!もう知らん!!」
彼女はのしのしと廊下を歩いていった。


一人残された横島。
「・・・んあ?美神さん?」
勿体無いことをしたものである。



それでも夜はふけていく・・・

「え?初日終わり!?私とポチのめくるめく禁断の愛のストーリーは!?!」


次の日。

「それでは〜皆さん〜。毎度恒例の除霊実習で〜す。気を抜いてると〜死んじゃうので気をつけてね〜」
「あ、あの、ちょっと急いでもらえませんか?これ以上押さえておくのはちょっと難しいんすよ」
最近すっかり一流の神となったワンダーホーゲルの切羽詰った声が聞こえる。
そして理事長の、危なくなったら〜手を上げるのよ〜という無責任な声と共に除霊実習はスタートした。
もちろん横島、美神のGS組も混ざっている。

「くのぉぉおおお!!!頭がいてぇぇえええ!!!」
横島は二日酔いで痛む頭を押さえつつ、霊波刀を構えて前線へ踊り出る。
GS組は前線で敵の数を減らしつつ味方全体に気を配り、危ない子を助けるという、良い子のヒーロー的仕事が任務だった。
「ふ〜ん、二日酔いに苦しむぐらいじゃ、まだまだガキね。横島クン」
横島が振り向くと、フフンと笑う美神が地縛霊の二・三体固まった奴を吹き飛ばしていた。
その顔に二日酔いとかそう言ったたぐいのものは全く見えない。

「そりゃあぁぁぁ〜あなたの鋼鉄肝臓なら大丈夫でしょうけどね、ふつぅぅ〜は無理なんでございますよ」
痛む頭をさすりつつ、今年二十歳の横島もそれなりに言うようになった。
しかし殴られることには変わりない。彼は飛んでくる鉄拳に身構えるが、
「うるさいわね・・・悪いことじゃあないでしょ。それよりホラホラ、集中!今年はエミとか他の皆が仕事でこれないから気が抜けないのよ!!」
拍子抜けてしまった。

なんか変だなぁ・・・と思う彼だがとりあえず目の前の敵に気合入れて集中することにした。

ちなみに冥子は理事長と別行動だ。
流石にここでのプッツンでは死者が出ないとは言い切れないからだ。


横島に話を戻そう。
右手のハンドオブグローリーを巨大な鍵爪に変えて、一気に横に凪ぐ。
「じょいやさぁぁあああ!!」

ぐごごごごご・・・・

その一撃だけで二桁レベルの悪霊たちが吹き飛ばされてゆく。
「あんた最近、どんどん人間離れしてるわね・・・」
美神があきれたような顔をする。
「別に悪いことでもないでしょ・・・・必殺イガ栗パンチ!うおりゃあああ!!」
続いてハンドオブグローリーがはじけ飛んだかのように枝分かれし、一本一本が悪霊を突き刺す。名前につり合わぬ威力である。

シュドドドドドド!!

ギョアアア!ぐぉおおお!!!

S級GSの美神にとっても、それは凄まじすぎる光景だった。
もちろん六道学園の生徒たちは皆、唖然として固まっている。
流石の横島も周りの異常さに気づく。
「ど、どうしたんだ?」
「あんた・・・人間の限界に・・・いや、もう超えてんじゃないの?」
「そうなんすか?まあ最近はやけに伸びが良いんですけど、そりゃオーバーですよ」
「(それでもまだ伸びるんかい・・・)」
美神は内心、今ので自信を失いかけた。でもまあキャパシティは向こうが上でも道具類をフルに使えば勝てなくも無い・・・・・と思いたい彼女だった。

「そうは言っ・・・!!」
「美神さん!」
二人の間に緊張が走る。
前衛の生徒の一人が悪霊を撃ち洩らしたのだ。
「きゃっ・・・」
別に兵法やら作戦やら考えていない癖に、そいつは、偶然の重なりで中距離専門の生徒たちの間をすり抜け、たいした近距離攻撃手段をもたない後衛の生徒に襲い掛かる。

ゴァアア!!!
「き、きゃぁあああああ!!」

美神は何とか駆けつけようとするが、いかせん間に合いそうも無い。
それでも何とか鞭状の神通昆を振るうが・・・やはり間に合わない。

やば・・・人身事故なんかあったら事務所の信用にも関わる・・・っ!!!(ヲイ!

絶望的な顔で悲鳴をあげる女子生徒をなすすべも無く見つめるしかない美神。

ここまでか・・・っ!!

ひゅん

美神は風を感じた。

そして振り向くまもなくそいつは自分を追い越し、女子生徒の元へ向かう。


気づけば先ほどの女子生徒はそいつにお姫様抱っこで抱えられていた。

「・・・くたばれ!!」
続いて息をつく間もなく悪霊は彼の、頭より高く振り上げた足(霊力入り)をド頭に叩き落され、地面にめり込みつつ消滅した。

「サイキックかかと落としってやつか?いや、霊能ネリチャギの方がいいかな」

なにやら自分がやったことに我ながら驚いているマヌケそうなそいつは、やっぱり当然ながら横島だった。

「おお、地面がクレーターみたくなってる。すっげ〜・・・ってわぁぁぁ!!!」
「あう、あうぅぅ!!うぁあああ!!」
彼はここで初めて自分が女の子(ショートカットの髪形。結構可愛い)を助けた事を思い出したようだ。
彼女はよほど怖かったのか、ひどく錯乱している。
「ど、どないしょ〜!いや、ごめんなさい!!俺が悪かった!!」
「あうぅぅ!!」
とりあえず地面に下ろし、同じように錯乱しておろおろし始める彼。

一見おかしな光景であるが・・・美神にとってはあまりにもショッキングなことだった。


間違い無い、今のは・・・超加速!
竜神の装具を借りてやったことがあるから解る。アレは人間なんかに扱える技じゃない!!どんなに鍛えたところで、可能になるほどのエネルギーが備わる前に体が崩壊するはず・・・!

ということは・・・もうコイツは・・・。

・・・それより前言撤回だわね。もしコイツと戦うことになれば、
私ごときじゃどう転んでも勝てっこないわ・・・。

「ああああっ!!ほらっ見て見て。水芸!!傘回し!!」
「あうっ・・・ひぐぅぅ・・・」
地面に座り込んで泣きじゃくる生徒(おっきなおめめがチャームポイント)がを何とかなだめようと、ヒーヒー言いながらあの手この手を尽くす横島。

なんだか・・・安心できる光景だ。と、美神は思う。
あいつに限ってそんなことは無い。他の誰かにあんな力があったら少し恐ろしいが、コイツなら・・・ちっとも怖いわけがない。

「ほらほら、救護班は誰?さっさとこの子連れてってやりなさい」
美神は腹踊りまでやり出そうとする横島をひっぱたいて、元気にそう言った。


アンタが何になろうが私は気にしないわよ・・・たとえ人じゃなくたってね。



一方、こちらは一年A組前衛部隊。

主力はもちろんパピリオとシロである。

パピリオがメガトン級の霊波砲を放って霊団を吹き飛ばし、撃ち洩らしはシロが片っ端から斬り飛ばす。
はっきり言って最強だった。

ドゲーン!

シュパパパパパッ!

ドゴーン!

ザシュッ、ズバババッ!

「・・・やることが無いわ」
「私たちっていったい・・・」

中距離、遠距離型の生徒たちは寂しそうに呟いた。


再びドゲーンと霊波砲がぶっ放され、幾多の霊達が天に召される。
しかし、何となく投げやりな感じがする、無駄のある攻撃だった。
「・・・パピリオ殿、技が雑でござるよ。どうしたのでござるか?」
横島直伝が自慢の霊波刀を振るいながら、シロが恐る恐るといった感じで尋ねた。
「・・・」
しかし相変らずパピリオは黙って霊波砲をぶっ放す。
それは霊団を貫通し、

向こうのお山の標高をちょっと下げた・・・。近いうちに調査団の人が困るだろう。

「あう・・・」
さらにパピリオのこめかみに浮かぶ青筋を目に止め、シロはおとなしく引き下がった。
いくら彼女でも、こーゆう状態のパピリオに手を出せばただではすまない事ぐらいはわかる。

何しろパピリオはプッツン冥子ちゃんを除けば、ほぼ日本最強の生物であると言っても過言ではない。
まともにやり合えば人狼といえども命が幾つあっても足りない。


しばらく機械的作業になりつつある除霊を続けていた時、パピリオが口を開いた。

「このSSって途中から私ヒロインだったわよね・・・」
「え゛?」
「なのに・・・なのになんでミカミばっかヒロインチックに書かれてるのよ・・・!
しかも今は修学旅行なのよ!ふつー私の出番はもっとあるはずよ!!

ちくしょー!神様のバッキャロー!!」
「ぎ、ぎりぎりの発言でござるな・・・」

彼女は冷や汗を流すシロを尻目に、悪霊どもに八つ当たりし始めた。

ごごごん!どど!ずが〜〜〜ぁぁああ!!ばん!

「次こそは禁断の○○○〜〜〜!!!」

絶え間なく続く爆音を聞きながら、シロは友について思いをはせる。

―――なんか・・・先生に似て来たでござるな〜。一緒にいると感化されるのでござろうか・・・

そして、ついでに神様にお願いをする。


拙者にも出番がありますように。と





周りの生徒たちもお願いをする。

パピリオとシロが一匹ぐらい撃ち洩らしますように・・・。と





皆、さまざまな思いを胸に除霊実習は続くのだった。








「あれ?」
どこかで金髪の傾国の美女(になる予定)が、何やら不当な扱いを受けているような気がしてなら無い。といった顔をした。

なぜかは解らんけど。

まあ次はきっと良い事あるさ!


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