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横島争奪チキチキバトル鬼ごっこ

残酷な選択!!


投稿者名:詠夢
投稿日時:04/ 5/30



「横島さんって、本当に最低ですね。」

『そ、そう…ハハハ…。』


にっこりと笑顔を浮かべて言い切る魔鈴に、ロキも笑うしかない。


「女の子の気持ちを踏みにじった罪は重いんですよ〜。」

『そうだね、うん。そう。』


含みある魔鈴の台詞に、ロキはとりあえず刺激しないようにうなずく。

彼女は今しがた、ちょっとした『ひと仕事』を終えてきたのだ。

女性を敵にしてはならない。プレイボーイ条件第一項。

ロキはしっかりと心のメモ帳に書き込むのだった。



          ◆



ここに、一人の爆走する少女がいた。名をパピリオ。


「ポチィ─ッ、どこでちゅかァーッ!!」


横島を見失ってから、パピリオはずっとこんな調子だった。

眷属たちを事務所中に放ち、くまなく捜索させたりしているのだが、いっこうに発見できない。


「あ〜もうっ!! こんど見つけたら、ブン殴ってでも逃がさないでちゅ!!」


物騒なことを口走りながら、彼女は元気いっぱいに駆けていった。



          ◆



ここに、怒りをまとう女がいた。名をワルキューレ。


「まったく、お前は何をやっている!! おかげで目標を見失ってしまった!」


彼女に一喝されて、後ろにいたジークはびくっと肩を震わす。

タマモに狐火で焼かれた焦げ跡が痛々しい。


「そ、そう言われても。だいたい姉上が…!」

「任務中は姉上と呼ぶなと言っているだろう!!」


これは任務ではないのだが。

ジークは深々とため息をつくと、責めるように半目で軽くにらむ。


「……ワルキューレ大尉が、完全に我を忘れて暴走した挙句、迂闊にも幻術に惑わされたんじゃないですか。」

「うぐ…ッ!」


よどみなく正確に事実をつかれ、さすがのワルキューレも怯む。

だが、このくらいでへこたれるようでは、魔界軍特殊部隊大尉は務まらない。


「と、とにかく!! 我々の現在最優先事項は、一刻も早い目標の発見および確保だ!! いいな!!」


そう言い捨てると、さっさと部屋の出口へ向かう姉を見ながら、ジークはふたたび深いため息をついた。



          ◆



ここに、野望に燃える中間管理職がいた。名を土偶羅魔具羅。


「フフフ…ついに!! ついにわしの時代が来たァァーッ!!」


背景に雷を背負いながら、遮光器土偶は高らかに笑う。


「ポチを捕まえるなど、このわしにかかれば容易いこと!! 何故なら、わしにはこの頭脳があるからな!!」


かつて、コスモプロセッサの演算装置の役目を果たした土偶羅なら、横島の行動予測をたてるなど簡単だろう。

今まではそのデータ収集に努めていて、そしてついに現在の予測位置を割り出したのだ。


「捕まえたら何を願おう…ッ!? ダビデ像のようなカッコいいボディを手に入れるか、それとも…!!」


こーゆーのを、獲らぬ狸の皮算用という。気が早いことだ。

というか、そんなことを夢見てたのか…。


「さあ、いざ行かん!! 我が成功への扉を開いて─!!」


彼は溢れんばかりの期待を胸に、目の前にそびえる扉を開いた。



          ◆



ここに、三人(+α)の狩人が顔を合わせた。


『あ。』


一瞬、全員の声がハモって、動きを止める。

だが、うち二人はすぐに我に変えると、いま相手に聞くべきことを聞いた。


『横島はどこにいる(でちゅか)!!』


………。


「な〜んだ、そっちも見つけてないでちゅか。」

「お前こそ、見つけてなかったのか。」


パピリオとワルキューレは、お互いにお目当てを手に入れてないとわかり、警戒をとく。

もし、どちらかが横島を捕まえていたら………。

ジークはふと浮かんだ考えに寒気を覚え、頭を振ってそのイメージを払う。


「あ〜、ビックリした…! いきなり他の参加者と鉢合わせするとは…。」

「あ、土具羅様。そうだ! 土偶羅さまは、横島を見かけまちぇんでちたか?」

「いや、わしはこれから…。」


言いかけて、土偶羅ははっと思い至る。

ここで「これから捕まえにいくところ」などと言う訳にはいかない。

言えば、そこに連れて行かされ、そのうえ自分の野望は遠のいてしまう。


「こ…これから探しに行こうかなぁ〜と…。」

「そうか…。まったく、アイツは今どこにいるんだ!?」


土偶羅の言葉に、ワルキューレは忌々しげに吐き捨てる。

ご、誤魔化せた…。

土偶羅は気付かれぬようほっと安堵する。

だが、このことが彼にさらなる悲劇を与えることになった。


「…そう言えば、土偶羅さまの演算能力でわかりまちぇんか?」


ギクゥッ!!

パピリオの一言に、土偶羅は滝のような汗を流す。


「そうか…! おい、土偶羅…。」

「い、嫌じゃ!! 何でわしがお前らのために計算せんとならんのだ!?」


ワルキューレの手から逃れるように、飛び離れる土偶羅。

その態度に、二人の目がすぅっと細くなる。


「ほう…拒むか。だが、そんなことはどうでもいいぞ?」

「別に土偶羅さまの意思は関係ないでちゅ。ちょっと回線いじって、その情報だけ取り出せればいいでちゅから…。」

「な…っ!? こ、この人でなしッ! 悪魔ァーッ!!」


二人の冷徹さを土偶羅は非難するが、もともと二人は悪魔であるし、人ではない。

異様な迫力を出しながらじりじりと近寄ってくる二人を、土偶羅は心底から恐ろしいと感じた。


「なに、すぐに済むから大人しくしていろ…。」

「大丈夫でちゅよ。用事が済んだら直してあげまちゅから…。」

「ひ、ヒイイィィーッ!!」


土偶羅は悲鳴をあげて、ささっとジークの背に隠れる。

かわって矢面に立たされるジークにはいい迷惑だ。

しかし土偶羅の気持ちもわかるので、とりあえずおそるおそる庇ってみる。


「あ、姉上…。一応、コレも軍の備品ですので、あまり無茶なことは…。」

「って、わしは物かいッ!? これでも兵鬼よ!?」

「いいから…それをよこせ、ジークフリード少尉。命令拒否は認めんぞ?」


妖しい輝きを宿す姉の目は……本気である。パピリオも同様だ。

拒否すれば命の保証はない。

ジーク、絶体絶命! あと土偶羅も!



          ◆



そのころ、横島は─。


「何でこんなところにゴキブリホイホイが─ッ!?」


ゴキブリ並みの生命力と揶揄され続けてきたが、まさか本当にゴキブリホイホイにかかる日が来るとは。

彼がその部屋に逃げ込んだ瞬間、まるで狙い済ましたかのような罠。

入り口すぐのところに仕掛けてあったそれに、横島は自ら飛び込んでしまったのである。


「あッ、ネバネバがさらに…!! あッ、あッ…! こ…このッ…ネバッ、ネ…ネヴァネヴァーッ!!」


人知れず、横島はピンチになっていた。


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