『スクール・ウォーズ/もうイジメは懲りごり!』:1996、アメリカ
1970年、ミネソタのヘイスティングスという小さな町に、中学生のデヴィッド・レアリーは暮らしている。小柄で眼鏡を掛けている彼は、大柄なクラスメイトのロスコー・ビガーからイジメを受けている。ロスコーは犬歯が目立つので、ファングと呼ばれている。デヴィッドの仲間もイジメられっ子で、互いを庇い合っている。物を爆発させたり火を付けたりするのが趣味のウルフ、父親が肉屋のジェリー、理髪店の息子で拳を口に入れられる黒人のアランだ。そしてクラスメイトのヴィクトリアは、みんなのマドンナだ。
来週に月の石が来ると聞き、そこから着想を得た怪奇小説をデヴィッドは書いてみた。いつか町を出て作家になりたいと、彼は夢見ていた。デヴィッドがオモチャの中で最も大切にしていたのは、ヒーロー「イーグル・カーニバル」の人形とバイクだ。しかしロスコーに奪われ、壊されて川に捨てられた。デヴィッドは滝の近くにある洞窟を隠れ家にしていた。洞窟には赤い岩から先に行くと二度と戻れないという、子供たちの噂があった。
学校に月の石が来て、生徒たちは列に並んで順番に見に行った。石はケースの中に入っており、触ることは許されなかった。しかし石の盗難事件が発生し、学校は大騒ぎになった。放課後、デヴィッドは川の近くで月の石を持っているロスコーを目撃した。帰宅した彼は両親から、引っ越すことを聞かされた。父が西海岸の支店に転勤することになったからだ。大喜びしたデヴィッドは、校長にロスコーが月の石を盗んだことを伝えた。車で家を出発する時、彼は警官に連行されるロスコーを目撃した。デヴィッドは「お前の友達じゃないか?」と父に訊かれ、「違うよ」と笑みを浮かべた。
現在のオークランド。『極限の果てに』という小説を出版したデヴィッドは書店でサイン会を開くが、全く客は来なかった。ナイジェルという男が興味を示したので、彼は家族を殺された主人公の再出発の物語だと説明する。サインを求められたデヴィッドだが、中学校から息子のベンを迎えに来るよう連絡が来た。仕方なくベンを迎えに出向いた彼は、悪友とは付き合うなと忠告した。彼は妻に逃げられ、息子と2人で暮らしていた。
デヴィッドが帰宅すると、ヘイスティングス中学校から手紙が来ていた。母校で後期に創作クラスを教えてくれないかという内容で、彼は受けることにした。デヴィッドは新居に行くが、ベンは不満そうな様子だった。隣に住むアートと妻のベティーが挨拶に来るが、やたらと世話を焼きたがるのでデヴィッドとベンは辟易した。翌日、デヴィッドが出勤しようとすると、アートが朝から薪を割っていた。彼は何も訊かれていないのに、「変だと思ってるだろ」となどど話し掛けて来た。
デヴィッドは中学校に着き、図書室で司書のラムと再会した。彼はラムが自分を覚えているかどうか分からなかったが、「ここで読書の大切さを教えられた」と言う。ラムは覚えていたが、中学時代に借りた本の返却期限が過ぎていると言われてデヴィッドは動揺した。彼は教室で生徒に会い、何でもいいから物語を書くよう促した。無理だと言う生徒もいたが、デヴィッドは嘘をつけばいいのだと助言した。職員室で教師たちと会った彼は、その中にヴィクトリアを見つけて驚いた。彼女は性教育を教える教師になっており、デヴィッドは小説を読んだと言われて喜んだ。
ベンはカービーという同級生に難癖を付け、暴力を振るって校長室に連行された。デヴィッドは呼び出しを受け、コケラー校長から注意を受けた。ベンは父から二度としないと約束するよう言われ、「分かんないよ」と軽く告げた。デヴィッドは技術教師をしているカービーの父親と会い、ロスコーだと気付いて狼狽した。彼は消防士になったウルフと再会し、 アランの店でジェリーと会うので一緒に飲まないかと誘われた。メソジスト教会の隣の店だと告げて、ウルフは去った。
ロスコーは生徒たちから馬鹿にされており、物を投げられても厳しく注意できなかった。仕事を終えたデヴィッドは、ロスコーを避けて足早に学校を去った。彼はビアホールへ行き、旧友たちと再会した。デヴィッドがロスコーの名前を出すと、ウルフたちは月の石を盗んで3年も悪名高い少年院に入れられ、すっかり人が変わってしまったのだと説明する。さらに彼らは、ロスコーの両親が夜逃げし、孤児院に入れられていたことも語った。
ロスコーの妻の妻のフェイスは安月給に悪態をつき、弱気な夫に見下すような視線を浴びせた。ロスコーはカービーから新任教師の名前がレアリーだと聞き、デヴィッドが幼少期にイジメていた相手だと気付いた。翌日、彼は昼食の時、デヴィッドに向かって豆を飛ばした。デヴィッドは同僚のクラークにロスコーの嫌がらせを受けていると話すが、信じてもらえなかった。デヴィッドはロスコーに注意できず、黙って食堂を去った。
夜遅くまで仕事をしていたデヴィッドが下校しようとすると、ロスコーが追って来た。彼が思い切って「また殴るのか。言いたいことがあるならハッキリ言えよ」と強気に出ると、ロスコーは「ペンを落とした」と差し出した。デヴィッドが受け取って立ち去ろうとすると、ロスコーは「お帰り」と不敵に笑った。夜中にベンが公園へ遊びに行こうとすると、デヴィッドは心配した。しかしベンは「田舎の公園にギャングなんかいないよ」と告げ、スケボーを抱えて外出した。
次の日、息子はカービーを見つけて捕まえた。デヴィッドがロスコーを警戒しながらロッカーに行くと、カービーがベンに吊るされていた。デヴィッドは彼を助けて「送って行くよ」と言い、家の近くまで同行した。「何とかして、あいつから逃れないと」とデヴィッドが言うと、カービーは「ちゃんと戦わないとね」と口にした。デヴィッドは彼に、「下手に逆らったら殴られる。先生は金を出すから見逃してくれと頼んだ。それでもダメなら、見つからないように逃げた」などと助言した。
デヴィッドが帰宅するカービーを見送って去ろうとすると、ロスコーが待ち受けていた。ロスコーはデヴィッドを威嚇し、逃げ出す姿を見て嘲笑した。ヴィクトリアに声を掛けられたデヴィッドは、学校が開くダンス・パーティーの世話役になったので一緒に行ってほしいと頼まれた。デヴィッドは喜び、「9歳の頃から君と踊りたかった」とOKした。全員が西部劇の格好をするとヴィクトリアに言われた彼は、ガンマンの扮装で会場へ赴いた。
会場にはカービーもいたが、ベンと仲間たちに見つからないように隠れた。ヴィクトリアと踊ったデヴィッドは、ロスコーがボランティアを引き受けて来ているので顔を強張らせた。ロスコーはデヴィッドとヴィクトリアにパンチを差し出し、飲むよう勧めた。彼がニヤニヤするので、デヴィッドはヴィクトリアが飲むのを阻止した。彼はロスコーが何か入れたと主張するが、信じてもらえなかった。生徒たちが馬鹿にして笑うので、ベンはデヴィッドに軽蔑の言葉を浴びせて立ち去った。
デヴィッドが車に向かうと、ロスコーが待っていた。「何が狙いだ?よくもデートを壊したな」とデヴィッドが言うと、ロスコーは「女は邪魔だ。お前のおかげで生き返った」と告げる。彼はデヴィッドへの嫌がらせとして、タイヤの空気を抜いていた。デヴィッドがベンを見つけると、「ママと暮らす」と告げられた。「居所が分からないぞ」とデヴィッドが言うと、彼は「捜すよ。パパと暮らすよりマシだ」と反発した。デヴィッドが「じゃあママに伝えてくれ。悪いのはパパだ。だがベストは尽くした」と語ると、ベンは「直接言ったら?」と告げる。デヴィッドが「もう離婚したんだ。元には戻れない」と言うと、彼は「結婚を悔やんでる?」と尋ねる。デヴィッドが「いや、いい息子が出来た」と答えると、ベンは一緒に帰るのを承諾した。
帰宅したロスコーは、妻と子供たちに強気な態度を初めて見せ、高圧的な態度で命令を下した。彼はフェイスに節約を要求し、「テレビの見過ぎだ」とテレビを川に捨てた。フェイスは豹変した夫に興奮し、抱いてくれとせがんだ。次の日、ロスコーは学校で生徒たちへの態度を豹変させ、命令に従うよう要求した。生徒のストーキーが軽く笑うと、ロスコーはグラインダーに顔を押し付けて威圧した。カービーはベンを見て逃げようとするが、いじめっ子グループの連中に捕まった。見ていたの生徒たちが「やっちゃえよ」と囃し立てると、カービーは「やるなら早くやってよ。どうせ僕には何も出来ない」と言う。しかしベンは困惑の表情で、何もせずに去った。
カービーはベンを追い掛け、「覚悟は出来てたのに。具合でも悪いの?」と尋ねた。ベンが「親が離婚したんだ」と言うと、彼は「ウチの親も離婚すればいいのに」と口にした。ロスコーは職員室の受話器とコップにグリースを塗り付けて椅子に細工し、オリーブオイルを床に撒いてデヴィッドを待った。しかし先に女性教師のヘレンが入って来て足を滑らせたので、ロスコーは慌てて謝罪した。しばらくするとデヴィッドが来て転倒したので、ロスコーは嘲笑した。
デヴィッドは椅子に座ろうとして転び、グリースで口元が真っ黒に汚れた。彼が教室を出ると、ロスコーが足を引っ掛けた。デヴィッドが逃げると、ロスコーは追い回した。クラークはコケラーに、デヴィッドが薬物中毒で自分を追い回すと訴えた。デヴィッドはコケラーに、ロスコーが自分に嫌がらせをすると訴えた。しかし信じてもらえないだけでなく、「噂に聞いている奇行が本当なら君の人選を誤ったことになる。改善が見られなければ代用教員を探す」と通告された…。監督はスティーヴ・マイナー、脚本はマーク・スティーヴン・ジョンソン、製作はリー・リッチ&ゲイリー・フォスター、製作総指揮はゲイリー・バーバー&ディラン・セラーズ、撮影はダリン・オカダ、美術はイアン・トーマス、編集はマーシャル・ハーヴェイ、衣装はモニク・プリュドム、音楽はデヴィッド・ニューマン。
出演はリック・モラニス、トム・アーノルド、ジュリアンヌ・フィリップス、キャロル・ケイン、ジェフリー・タンバー、カーティス・アームストロング、フェイス・プリンス、トニー・ピアース、ドン・ノッツ、ブレイク・バショフ、コディー・マクマインズ、ハリー・ウォーターズJr.スチュアート・パンキン、ジャスティン・ジョン・ロス、マイケル・ズウィナー、ティファニー・フォスター、マシュー・スロウィク、C・J・グレイソン、グラント・フーヴァー、ビル・ドウ、スーザン・ベイン、クリスティン・ウィリス、イングリッド・トーランス、タイラー・ヴァン・ブランケンスタイン、ダグ・エイブラハムズ、リリアン・カールソン、マット・ヒル他。
『フォーエヴァー・ヤング/時を超えた告白』『恋人はパパ/ひと夏の恋』のスティーヴ・マイナーが監督を務めた作品。
脚本は『ラブリー・オールドメン』『ラブリー・オールドメン/釣り大将LOVE LOV日記』のマーク・スティーヴン・ジョンソン。
デヴィッドをリック・モラニス、ロスコーをトム・アーノルド、ヴィクトリアをジュリアンヌ・フィリップス、フェイスをキャロル・ケイン、アートをジェフリー・タンバー、クラークをカーティス・アームストロング、ベティーをフェイス・プリンス、ウルフをトニー・ピアース、コケラーをドン・ノッツが演じている。中学時代のデヴィッドがロスコーに虐められるシーンには、何も笑えるトコが無い。
あとロスコーはイジメのレベルを超えて、窃盗までやらかしているし。
ロスコーが盗んだ月の石を眺めている時の様子からすると、何か事情がありそうには感じられる。だが、どんな理由があるにせよ、泥棒は泥棒だ。
しかも終盤になって明らかになるけど、ロスコーが月の石を盗んだのは「宇宙飛行士になりたかったから」ってのが理由なのよ。家庭の事情とかは全く関係が無いのよね。イジメっ子なら子分的な奴がいても良さそうなのに、中学時代のロスコーは常に単独で行動しており、不自然に思える。
また、デヴィッドはウルフたちについて「自分と同じようにイジメを受けている仲間」とナレーションで紹介しているけど、実際にイジメを受けている様子は全く描かれていないんだよね。
デヴィッドがロスコーにイジメを受けるシーンだけなのだ。
なので「ウルフたちはイジメられっ子仲間」という設定は、表面的なモノに留まっている。「子供の頃にイジメの加害者だった男と被害者だった男は、その子供たちの世代で立場が逆転する」という設定が、この作品の軸になっている。
その設定自体には、笑いを生み出す力は皆無だ。
しかし、どうやら製作サイドは、その時点で面白いと思っているような節がある。
っていうか、そもそもデヴィッドがイジメを受けている時点で、そこに笑いがあると思っているように見えるのよね。それは絶対に違うぞ。
ロスコーがデヴィッドとの再会で高圧的で怖い奴に変貌したのに「妻が惚れ直した」みたいな表現も、マチズモの歪んだ称賛になっており、「完全に間違えている」と感じるだけ。しかも、ロスコーは大人になって弱々しい男になっていたのに以前のいじめっ子状態に戻るので、ますます笑いを生み出す要素は減ってしまうし。
デヴィッドが攻撃を受けてビクビクしたり、それをロスコーが嘲笑したりする様子を見て、何をどう笑えばいいのかと。
っていうか「少年院に入ってすっかり変わった」とアランたちが言っているのに、デヴィッドに対してだけは以前と全く変わらない態度を取るってのは、どうにも理屈が通っていないように感じるし。
アランたちだって、ロスコーに虐められていたんだろうに。デヴィッドはウルフたちからロスコーが孤児院に入れられていたと聞いた時、何となく気の毒に思っている様子、罪悪感を抱いている様子を見せる。
だけど、完全にロスコーの自業自得だからね。
そんなロスコーは終盤になって「悪いのは俺だけか。お前も悪い」とデヴィッドを責めるけど、何がどう悪いのかと。彼は「臆病でガッツのある所を見せないからだ」と言うけど、そんなのは何も悪いトコじゃないからね。
ようするに、ロスコーって擁護できる要素が皆無なのよ。デヴィッドは自分の息子がカービーを虐めていることを、明確に認識しているはずだ。
だったらカービーが昔の自分と重なるはずなのに、息子にイジメをやめさせようという行動は何も取らずに放置している。
そして彼は、カービーに「金を渡して解決しろ」みたいな見当外れの助言をしている。
教師としても普通に失格だし、これまた何の笑いにも繋がらない。
親たちの関係と子供たちの関係を使って結末に結び付けようという狙いは見えるけど、上手くやっているとは到底言い難い。終盤に入るとロスコーはデヴィッドをネイルガンで撃ったり火炎放射で攻撃したりするし、明らかに殺そうとしている。 そういうサイコ・スリラーにしたかったのなら、最初からその路線で行けば良かったのよ。
中途半端なテイストにしているから、ヌルいコメディーにしか見えなくなっている。
終盤に入ってサイコ・スリラーにシフトすると、それはそれで「完全に味付けを間違っているだろ」と言いたくなるし。
で、そこまでシャレになるないぐらいエスカレートさせておいて、最終的に「子供に呆れるカービーに説教されて和解しました」という形で締め括るんだけど、それは無理があるだろうに。(観賞日:2025年7月26日)
第17回ゴールデン・ラズベリー賞(1996年)
受賞:最低主演男優賞[トム・アーノルド]
<*『スクール・ウォーズ/もうイジメは懲りごり!』『ドタキャン・パパ』『ステューピッド/おばかっち地球防衛大作戦』の3作での受賞>
第19回スティンカーズ最悪映画賞(1996年)
受賞:【最悪の主演男優】部門[トム・アーノルド]
<*『スクール・ウォーズ/もうイジメは懲りごり!』『ドタキャン・パパ』『ステューピッド/おばかっち地球防衛大作戦』の3作での受賞>