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高木正勝の過去の音源はほとんどが好きだ。 ただ、一度ライブを観てしまうと、”音源とライブの差”に対して戸惑いもあった。 というのは、ライブでは電子音と生音が緻密でありながら、お互いに引き立てあうように共鳴して、すんなり耳にすることが出来る、ある種のラフさがあるのだけど、 |
レコーディングされたものになると、きっちりと構築され過ぎていて、少々堅苦しくなっていた感もあったということ。 でも、最新作である『COIEDA』は明らかに違う。 これまで以上にしっかりとしていて質は高いのに、これまで以上に聴く側がすんなり入り込める隙がたくさんある。 んで、「この人は色んな要素を詰めなくても、ピアノを弾くのみで充分によかったのに、今まではある一定のラインまで作り込まないと気がすまなかったのかも?」
なんて言いたくなったりもしちゃう、伸び伸びと音を鳴らすこと自体に自由になった印象すら受ける開放感もある。 さらに、持ち味である楽器やラップトップで作られた音と人の会話・生活の雑音といった日常音の混ぜ方は、より同等の位置でごくごく自然に溶け込むふうになっていて。 ふと「人為的に鳴らされた音と、そうでない音の差なんてないんじゃないか?」と感じてしまうほど。 ミニマルな要素の強いエレクトロニカ・カワイイ電子音が飛び回る歌物・ただただある街の一時を録音しただけのもの。 高木正勝の作風は多種多様であったけど、それはアルバムごとに変化していったもので、1つの中で聴けるものではなかった。 しかし、今回はその辺りの境界線もなくなった感じ。 Mice
Parade とかを彷彿とさせるリズムが複雑に絡み合った曲もあれば、David Sylvian
をフューチャーした湿り気のある素朴な唄、前記した日常の音に恣意的な音を融合させる音楽、エレクトロニカというジャンル用語自体を「陳腐だなぁ。」と感じる気持ちよさで電子音が分裂しながらくっついて行く展開をする音響、ピアノだけで簡素に弾かれた美しいメロディ。 などなど、「この1枚だけで、こういった系統の音楽はほとんど楽しめるんじゃない?」という多彩さ。 なのに、全てが何の違和感もなく心地よく並んでもいて、はっきり言って名盤。 そして、やっぱりこの世界は、毎日の中で見落としている、何でもないのにとてもキレイで嬉しくなってしまうような感覚を、ある光景や風景として体感させてくれる気がする。 最後の「primo」の思わずグッと来る静謐なコーラスのオーケストラの後に、飾り気なく手の感触も伝わるくらいに丁寧に奏でられる鍵盤の優しい響きは、幾ら言葉を並べるよりもさりげなく雄弁であり、ありふれていてつまんなく映る日々がかけがえなく大切であることを見せてくれているように思う。 |
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[ CD ] @ pia flies A new flat B midnight C cruz D exit/delete E
COIEDA F O.P.R G dogma H girls I private drawing J
cuba K birdland #3 L change of season M opfern N primo
[ DVD ] @ birdland #3 A girls B maggie's trip C private
drawing D new flat E aura F primo G exit/delete first sight |