Outline of 26th study
第26回勉強会の内容紹介

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ここでは,平成10年10月16日(金)に開催した第26回勉強会の様子を報告します。


 

今回は,「くすりの相談室を主宰して」と題して,生駒市内で調剤薬局を開業しながら,毎月1回地元の公民館を会場に,ボランティアで 「お薬 の相談室」を開設しておられる,薬剤師の寺岡多香子さんを講師に迎えてお話をいただいた。 

   講師のプロフィール
寺岡さんは,奈良県で漢方薬局を開業されている薬剤師のご家庭に生まれ,神戸女子薬科大学(現,神戸薬科大学)を卒業後,東洋医学今中研究所にて薬学を研究された後に,「町のかかりつけ薬局」として生駒駅南口に開局された白菊調剤薬局の薬局長として勤務された。そして現在は生駒駅北口で,エンゼル薬局を開業されている。 
   
        講師の寺岡薬剤師 「当日の講演から」

 

 当日の講演の概要

 「くすりは,リスク」,「薬は決して安全な
 ものではない」 というのが,薬剤師として
 活躍されている寺岡さんの発想の原点で
 ある。 また,医者と患者,医師と薬剤師
 のコミュニケーションの大切さを強調され
 る。
 
  平成7年1月の阪神大震災の際に,ボ
 ランティアとして患者さんとの接触を持った
 のを契機に,以後,生駒市内で月1回,医
 薬品に関する,よろず相談を受ける場とし
 て,「薬の相談室」を開設されている。

  以前,そこに来られた患者さんの中に,
 かかりつけの各科のお医者さんから出され
 た薬の合計が何と16種類にも及ぶ方がお
 られ,寺岡さんは薬を出した医師に面会し,
 その必要性を確認したところ,薬種の多さ
 もあって適切な回答は得られなかったとい
 う。

  元来,我が国では医者が処置の一環とし
 て薬を調合・投与するという伝統があって,
 古くから薬剤師が第三者的立場で医師と対
 等に存在する欧米とは,対極にあり,現在
 国際的にみても「医薬分業」が確立していな
 いのは,我が国と台湾だけだという。   

従来は政府の医療政策により,薬価差額が医院経営の基盤を補償するという構造があったが,保険医療費の破綻から,継続的に薬価基準の引き下げが実施されてきており,今では薬価差益は5%の水準にある。
 
もっとも,医師の技術料が相対的に低水準にあることも問題だという。確かに,受付で薬を投与するだけの方が,診察をするよりも率が高いというのは矛盾かもしれない。

 とにかく,一連の医療制度改正の影響から,最近では,院外処方箋を出す診療所が増えてきたという。

 以前に,ある調剤薬局の責任者の方がおっしゃっていたように,これからは,周辺に親切な調剤薬局のあるお医者さんが選別される時代になるのかもしれない。

 癌(ガン)という字から見ても,「物がほどあるから起こる」ではないか,そして,「むしろ何もないことの豊かさが大切かもしれない」と結ばれた。
 
 
 
 
 
 
 

 講師の著書紹介

寺岡多香子著 
「くすりの相談室」  
滑ヨ西看護出版 
1998年6月25日発行 
「私が医療機関で仕事を始めてから何か腑に落ちない部分がありました。それは,どんなに多くの薬が出されていても,薬剤師は医師の処方に口出せない,いや口出さない。それは副作用かもしれないと思っても,医師の処方は医師の責任のもとにあり,薬剤師はよほどの根拠がないと「かもしれない」は報告できない。いや,しない。そのジレンマを大変感じてきました。」  
             (「はじめに」より抜粋)

                                       ※ 講演概要の文責は,世話人にあります。