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SPACETIME 2004

Introduction to the Philosophy of Space and Time

Rods in a Gravitational Field


『アインシュタインの思考をたどる』第5章、131ページの段落、56節に誤りが含まれていたので、もとの段落(誤りの箇所は赤字表記)と、書き換えた段落(行数は同じまま)とを対照し、書き換える理由についてコメントを加える。2乗の指数の表記はHTMLでは「r^2」のように替えているので注意されたい。座標のとり方から生じる見かけと、物理的な事態を混同してはいけないと力説していながら、わたし自身がその混同を犯していたので、再訂正かたがた読者に対してお詫びする。


56. 重力場における物差し

次に、重力場におかれた物差しの振る舞いについてもう少し詳しく見よう。星の半径方向におかれた物差しについては、角度の変化分がゼロとなるので(7)式はもっと簡単になって、


(8)()^2 = (dr)^2 /(1- (2M/r))


となる。つまり、半径rの地点で星に向かって垂直におかれた小さな物差しの長さ(固有距離)は、座標値による半径方向の距離drよりも大きくなる(物差しは伸びる)。そして、rの値が小さくなればなるほど、大きくなる程度も増す。

他方、円周方向におかれた物差しの長さは(7)式の第二項r^2()^2によって決まる。これは、ユークリッド幾何学での極座標表示と変わらないので、この方向での空間は曲がっておらず、物差しの長さはrの値にかかわりなく等しいことが明らかである。これによって、一定体積の物体(例えば球状の物体)には潮汐重力(星の円周方向で圧縮、中心への方向で伸張)の効果が生み出されることがわかるだろう。重力の強いところでは、半径方向で長さが伸びるのだから、円周方向の大きさが縮まなければ一定体積が保てないのである。

図 100  重力場におかれた物差しと潮汐重力

次のように訂正↓

56. 重力場での空間の曲がり方

次に、重力場での空間の曲がり方についてもう少し詳しく見よう。星の半径方向については、角度の変化分がゼロとなるので(7)式はもっと簡単になって、


(8)()^2 = (dr)^2 /(1- (2M/r))


となる。つまり、半径rの地点で星に垂直な方向の距離(固有距離)は、座標値による半径方向の距離drよりも大きくなる。そして、rの値が小さくなればなるほど、大きくなる程度も増す。したがって、「物差しは相対的に縮む」ということもできるが、物差しの長さを一定と見なすなら、同じことは、「空間が曲がっている」と言い換えられる。

この曲がり方をもとにして、星の中心に一面を向ける小さな立方体空間の各面の曲がり方が計算できる(計算は省略するので、Wheeler 1999, 129-141などを参照)。結果のみを紹介するなら、図100のようになって、星に向かう面と、星に垂直な面とで曲がり方(面の曲率)が違ってくる。自由落下する物体に対して図75で示したような潮汐重力がはたらくことは、シュヴァルツシルト幾何学ではこういった曲率から説明されることになる。

図100 重力場での空間の曲がり方


コメント

富士市在住の服部哲雄さんという読者から誤りの指摘をいただいた。大変ていねいに読んでいただいたことに感謝したい。

(1)一つは重力場での「固有距離」の伸びとそれを測る「物差し」の縮みの混同に関するもので、これはわたしの初歩的な誤りである。要するに、「距離が伸びる」ということは、その距離を測る物差しの数が相対的に増えるということだから、「物差しは縮む」と言い換えなければならない。しかし、星を取り巻く同心円上の観測者(小さな領域では局所ローレンツ系で近似できる)は、自分の物差しが縮まず、一定の長さだと見なすのが自然なので、この仮定と測定結果との折り合いをつけるためには、(埋め込みダイヤグラムで示したように)「空間が曲がっている」という見方をとるのが最善なのである。

(2)もう一つは、重力場での方向による空間の曲がりに関する記述についてであり、これは座標の取り方や、線を考えるのか面を考えるのかで微妙な注意が必要になってくる。円周方向でもメトリックには恣意的なrが入っているので、空間が曲がってないと即断してはいけない。しかし、ここでは、シュヴァルツシルト座標に即して潮汐重力の現れ方を解説するのが主眼なので、微妙な事情には立ち入らずに記述を全面的に改めた。訂正図から明らかなように、いずれの面も曲がっているのである。(Figure adapted from Wheeler 1999, p. 129.)

Reference

Wheeler, J. A. (1999) A Journey into Gravity and Spacetime, Scientific American Library.


Last modified Jan. 18, 2005. (c) Soshichi Uchii

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