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科学哲学入門

デ・フィネッティの定理

『科学哲学入門』 6.9、6.18 への補足


ベイズの定理を使った統計的仮説の確証は、対立仮説がテキストの事例のように有限個ではなく、無限個ある場合にも拡張できる。その場合、個々の仮説の事前確率を言うかわりに、事前確率分布を考えた方が数学的には扱いやすい。まず、有限個の仮説の場合(テキストの事例)を図示してみよう。

図1


仮説が0から1の間の任意の数値を与えうる場合は、当然無限個の仮説が考察の対象となる。このときは、個々の仮説の事前確率は、無限小量の「確率密度」によって与えることができる。要するに、無限に小さくても重みを区別できること、そして確率密度の値をすべての仮説にわたって合計する(積分する)と確率 1 になる、というのがポイントである。

図2

 

図3


そこで、こういった事前確率配分が、実験によるデータ集積(とベイズの定理適用)につれてどのように変化するか、見てみよう。まず、図1の事前確率配分は、12回の試行の結果表が8回でたという情報のもとでは、図4のように変わる。

図4

一般に、連続的な分布の場合、事前確率密度から事後確率密度へ、あるいは事前確率分布から事後確率分布への(ベイズの定理による)変化は、観察データに示された問題の事象の相対頻度によって引き起こされ、その相対頻度の値にピークをおくように変わってくる。図5参照。

図5


デ・フィネッティの定理が述べることは、事前確率密度あるいは事前確率分布がよほど特殊なものでない限り、どのようなものであっても事後確率密度あるいは事後確率分布は同じものに収束していくということである(可換性が満たされておれば)。つまり、事前確率分布が図2のようなものであっても、図3のようなものであっても、十分長い間には事後確率分布は等しくなり、観察された相対頻度のところにピークをもつ形になる。

この定理が成り立つための条件は、(1)事象の生じた順序は関係なく、試行の長さと事象の頻度のみが本質的な情報とされる(したがって、同じ長さで問題の事象の頻度が等しい二つのデータは同等である)という可換性、および(2)試行の長さに制限がなく無限に続きうる、という二つである。


Nov. 11; last modified November 19, 1999. (c) Soshichi Uchii

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