How to handle the Valuation Function V?
付値関数を使うときの注意
テキストではモデルを<V, D>の順序対によって定義した。このうち、Vの表記の仕方をある意味で簡略化してあるので、少々とまどう読者が出てくるかもしれない。全称命題の真理条件を想起してみよう。
V(∀xA(x)) = T ⇔ V(x) の値に関わらずV(A(x)) = T
このとき、V(x) の値が動いていることに注意されたい。与えられたモデル<V, D>で当初、例えば、
V(x) = e
としてあっても、限量子を含む式の真偽を考えるときには、e 以外の値(もちろん、D の成員)も考慮しなければならないのである。したがって、V(x) = e のときV(A(x)) = Tであっても、V(x) = e' のときV(A(x)) = F であれば、問題の全称式は偽となる。自由変項を持った式の真偽は、このように常に変項の値を指定した上でしか決まらない。
こういったところで、初心者は記法の混同を犯すことが多い。
∀xA(x)
は述語論理(形式言語)内の記号式、
V(x) や e
などは、この述語論理の形式言語に「外から意味を与える」文脈で出てくる、モデル理論(メタ言語)の表現であることをしっかり区別してもらいたい。したがって、個体領域内の一つの個体そのものを表す記号e やV(x)などを形式言語の記号式の中に代入した表現、例えば、
A(e), A(V(x))
はナンセンスとなる。面倒でも、「V(x) = e のときV(A(x)) = T、あるいはV(A(x)) = F」というように、モデル理論内の表現を使って、記号式の真偽を論じなければならない。
述語論理の言語 モデル理論の言語 a, x, A(x), ∀xA(x), A(a) など D = {e, e'}, V(a) = e', V(A(x)) = T など
Uchii, S. (1989) 『真理・証明・計算』ミネルヴァ書房、1989。